浅草においでよ!

  • Cb090820 浅草の各商店で配布しているフリーマガジン。特集記事を担当しています。見かけたら手に取ってください。詳しくはこのブログの投稿記事にて。
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活字生活

2009年8月28日 (金)

サンバが夏を〆くくる(『浅草においでよ!』こぼれ話)


今回で29回目となる“浅草サンバカーニバル”は、浅草の夏の最後をしめくくるイベントとして、すっかり定着した感がある。

またも直前になってしまったが、今年も浅草サンバカーニバルが開かれる。

*  *  *  *  *  *  *

いつの間にか定着した感じだったが、以前から「なぜ浅草でサンバ?」という思いがあった。
浅草には、三社祭、ほおづき市、隅田川の花火、時代まつり、羽子板市と、一年中イベントが盛り沢山だが、日本文化を感じさせる行事に比べて、サンバだけは明らかに違和感のあるイベントだ。

公式ホームページによると、
「浅草といえば「江戸下町情緒」というイメージがありますが、実は大の新しもの好きなのが浅草ッ子の気質。(中略)そうした背景のなか、昭和30年代後半から40年にかけて、盛り場の中心は、他の地区に移っていきました。このような状況の中で当時の内山台東区長と浅草喜劇俳優の故・伴淳三郎氏が、浅草の新しいイメージをつくるものとして、ブラジルのサンバカーニバルを浅草のお祭りとして取り入れることを提案。これをきっかけに、浅草の商店連合会が主体となるサンバカーニバルが誕生したのです」
とある。

浅草サンバカーニバルは、浅草商連が強力にバックアップしているイベントなので、今年の『浅草においでよ!』で取材させてもらったとき、思い切ってその辺の経緯を聞いてみたいと思った。今年は浅草商連60周年で幹部の方々による座談会が企画されていたので、ちょうど良い機会だった。
誌面では1ページ分くらいにまとめているが、実際の座談会ではその何倍もの話を聞くことができた。150分ほどの座談会の中で、およそ50分近くがサンバカーニバルの誕生秘話。なにせ、ブラジル視察に参加した永野浅草観連会長(当時は浅草商連の事務局員)も座談会のメンバーだったから、誌面では書けないような苦労話を含め、色んな話を聞くことができた。

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サンバカーニバルを作った大きな要因としては、夏休みやお盆休みがある8月、当時の浅草には大きなイベントがなかったため、浅草に人の足を向かせたいという願望が強かったらしい。当時の浅草商連の資料を読むと、「若い人の街 浅草」をキャッチフレーズにするなど、寂れかけた街を何とか活性化したいという思いが感じられる。
当時区長だった内山栄一氏が、伴淳三郎に相談したところ「サンバっていうのは三社祭の熱気に似ている」と提案したらしい。
実際に伴淳三郎から提案があったかどうかは、永野会長も伝聞で聞いておりもう一つハッキリしないのだが、一部ネットで書かれている「兵庫県神戸市がすでに神戸まつりでサンバパレードを行っていたことから、浅草の商店街や観光連盟などが読売新聞社を通じて、神戸まつり関係者にコンタクトを取ってそのアイディアを浅草サンバカーニバルに流用したというのが真相であり、伴淳三郎の話は後づけ」というのは、少し間違っているようだ。
まず、浅草観光連盟は、当時は積極的に動いていない。これは、当時、浅草寺や関連寺社などが浅草にサンバを持ってくる事を嫌がり、浅草観連もそれに同意していたからだ。神戸祭りからヒントを得ていたとしても、神戸祭りのアイデアをそのまま流用するというほど、当時の浅草サンバカーニバルは完成度が高くない(笑)。

まぁそのへんの真偽については、すでに知っている人も少なくなりつつあり、今後どこかで機会があればじっくりと話を聞いてみたいと思う。

とにかく、浅草寺も浅草観連も消極的だった中で、浅草商連が主体となって実行委員会形式で浅草サンバカーニバルは誕生し、紆余曲折を経ながらも、いまでは浅草の夏の風物詩と成長した。

*  *  *  *  *  *  *

そうそう。もう一つ、『浅草においでよ!』のこぼれ話があった。

同誌23ページには、サンバカーニバルの記事を入れてある。
今年は別の記事を書くつもりで原稿も用意していたのだが、ちょっとしたトラブルで去年の記事を流用した。

実は、印刷の直前になって、サンバカーニバルの公式ガイドパンフレットに書かれている「パレードの構成」に誤りがあったのだ。
『浅草においでよ!』の去年のサンバの記事は、公式パンフレットのデータをある程度流用させてもらって「パレードの構成」について記事を書かせてもらった。
で、今年の公式ガイドにも「パレードの構成」について去年と同じような解説が載っているのだが、これが去年から間違っていたらしい。けっこう大きな誤りだった(笑)。

そこで、急遽、『浅草においでよ!』の記事は「パレードの構成」にして、間違っている点を修正しようということになった。

どこが修正されているか興味のある人は、下の画像をクリックして確認してみてください。

Cb0908281
*  *  *  *  *  *  *

ということで、いつも情報が遅くなって申し訳ないが、運良くサンバカーニバルに出かける前にこれを見た人は、ぜひ参考にしてください。

今年のサンバカーニバルの様子については、僕も撮影することになっている。
明日以降、「浅草の風」に掲載するつもりだ。

【イベント名】浅草サンバカーニバル
【日時】2009年8月29日土曜日
【会場】浅草 馬道・雷門通りなど
【公式サイト】http://www.asakusa-samba.jp/


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2009年8月20日 (木)

『浅草においでよ!』H21年度版が発行


ということで、今年も何とか『浅草においでよ!』が発行された。

*  *  *  *  *  *  *
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「浅草においでよ!」平成21年度版

浅草商店連合会発行のフリーマガジン。
今年の企画ページの目次は……

■お笑いコンビ“ダイノジ”インタビュー
  浅草にはボクらの“憧れ”がある

■浅草エンタメ案内
  浅草演芸ホール/東洋館/浅草花月/
  木馬亭/木馬館/浅草公会堂/ほか
  出演者インタビュー:南海キャンディーズ

■浅草商連60周年記念座談会
 これからも、もっと「浅草らしく」

■外国人観光客も読める!
  ◆英語・中国語・韓国語による
   解説ページが新たに登場!
   外国から来た観光客の皆さんも
   楽しめるようになりました。

■ほか
  ◆浅草催事かれんだぁ
  ◆浅草サンバカーニバル

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クリックすると大きな画像になります


企画記事のページのほかに、浅草にある約1300軒の商店の「店名」「電話」「住所」「地図」が載ってて、巻末には浅草の各店舗で使えるお得な「クーポン券」もついてる。

僕は、この企画記事の、構成・取材・文・デザイン・一部撮影を担当。
今年も、明日以降、それぞれの記事についてもう少し詳しく紹介する「取材こぼれ話」をこのブログで書く予定。

浅草の各施設、店舗など、浅草中で無料配布しているので、良かったら手にしてください。


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2009年8月16日 (日)

烏賀陽さんが裁判で勝利!


なんだかお盆になって、ようやく夏らしい陽気に見舞われている。
こちらは相変わらずゆっくりする暇もなく、スクーターを走らせても汗が出てくるような中を走り回っている。

それでも昨日は、久しぶりに疲れが取れた。
このところ、夜もゆっくり寝られず、だからといって日中に昼寝をする余裕もなく、ずっと疲れが取れない日が続いて、いつも夜寝る前になるとかなり調子が悪かったのだが、昨日は昼寝も出来て夜もしっかりと寝られたため、随分と楽になった。
ちょうどかなり長かった髪もサッパリと短く切ったので、気分も爽快。陽気は厳しいくらいだが、今日は心身とも元気いっぱい。

それにしても、つくづくと無理が利かない年齢になったと実感する次第。

*  *  *  *  *  *  *

さて、このブログを休んでいる間に、ちょっと報告をしておくべきことがあったので、遅ればせながらご報告。

これまで何度かお伝えしてきた烏賀陽さんの裁判(オリコンが烏賀陽さんに言いがかりをつけて不当に高額訴訟を起こしていたもの)が実質的に勝利する形で和解した。

詳しく説明する余裕がないので、ぜひ「うがやジャーナル」を読んでください。

この裁判の勝利の意味は、ジャーナリストや表現の自由にとっては大きなもので……というか、そもそもこんな裁判を起こす事が大問題で、勝利する事は当然なわけだが……、少なくとも国民が持つ権利が後退する事がなかった意義というのは、日本の民主主義にとってとても重要なことだった。

ということで、また書ける機会があれば書きたいと思っているが、同じようにジャーナリストたちの正当な活動に対して、裁判を利用して圧力をかけるという悪質な手法が増えている。
今回の勝利は一つの分岐点ではあるが、こういう風潮がなくならない限り、安心は出来ない。

皆さんも、ぜひ注目していてください。



2009年7月21日 (火)

ワークショップの講師なんかもやってたりする


度々書いてきているが、僕は表立っては出版の編集者という肩書きなんだけども、まぁ色んな仕事をやっていたりする。

色んな事をやっているため、よく知らない人からは、僕がどんな職能の人間なのか、今ひとつ分かってもらえない事が多い。大雑把に言えば別にまったく違う分野というわけではなく、どれも出版や広告の仕事と繋がっている事なんだけども、まぁ仕方ないかも知れない。子どもたちや家族ですら、実際に僕がやっている仕事を理解していないと思う。

で、昨日もいつもとはちょっと違う仕事だった。今回はそんな仕事を紹介したい。

*  *  *  *  *  *  *

二足歩行ロボットの格闘技で、「ROBO-ONE」」というイベントがある。日本はもちろん、世界的に見ても割と大きなイベントとして有名だが、まぁテレビ中継されているわけではないので、ロボットに興味のない人は知らないだろう。

おもちゃのバンダイ、「ガンダム」を作っているサンライズ、ロボット精密機械メーカーの近藤科学など、国内のロボットと関係する企業たちが協賛金を出し合って運営しているイベントで、日本全国で二足歩行ロボットの競技会を開いている。

何で僕がこのイベントに絡んでいるか、話すと長くなるので割愛するが、まぁイベントのときにフロアディレクター的な手伝いをしている。要するに、現場における何でも屋さんだ。

18日〜20日までの3日間、有明のパナソニックセンターで、『2009夏!ロボットサミット』というイベントが開かれ、その中でROBO-ONEの大会も開かれていたのだが、別の仕事で忙しかったので3日目の昨日だけ手伝ってきた。

といっても、今回は途中参加だったこともあり、いつものようにフロアディレクターではなく、パナソニックセンターで開かれた「親子でロボットを作ろう!」というワークショップの講師役。

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「ロボット」といっても、TAMIYA製のボクシングファイターというキットを使って組み立てるだけなので、プラモデルを作るようなもんだ。
およそ1時間半ほどで組み立てられる簡易キットだが、小さい子どもだけだと少し難しいので、お父さん、お母さんが奮闘する場面も多かった。

僕は、作り方のポイントとなるところを説明したり、組立説明書では分かりにくいところをフォローしたり、あるいは組み立てが難しいところを手伝ったりするだけで、実は講師というほど偉そうな事は何もしてない(笑)。

組み立てると、下の写真のようにボクシング型の格闘技ロボットが出来あがる。

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そう言えば、僕も昔からかなりガンダムが好きだけども、ガンプラにはハマらなかった。プラモデルはたくさん作ったが、もっぱらお城シリーズ、江戸の街シリーズ、屋台シリーズなんてジオラマ系のプラモデルばかり組み立てていた。
正直言うと、今でも自らロボットを組み立てる気にはなれない。
ROBO-ONEはとても面白いイベントだからこれからも関わって行くだろうが、選手として出る気にはならないだろう。この辺は、昔からプレイヤーになるよりも裏方の方が好きだった現れなんだろうと思う。

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上の写真は、今回のROBO-ONEに出場したロボットたちの記念撮影。
後ろに若いお姉さんが二人写っているが、こちらはROBO-ONEガールなので、ロボットではない。念のため。

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今回のように親子参加型のイベントを手伝っていると、たびたび親子のワークショップなどを手伝うことがあり、こんな事も僕の仕事の一部だったりする。
ということで、今回はいつもとは全然違う仕事の紹介でした。

ROBO-ONEについては、また改めてお知らせするので、もしタイミングが合えば、一度ぜひ遊びにきてくださいな。


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2009年7月16日 (木)

間もなく、貧しく、美しく


ある編プロにどうしてもと頼まれて、他人がデザインしたデータの修正を請け負った。

本来はこういう仕事はお断りしているが、すでに色校正が上がっていて、明日の朝までに直して再入稿しないといけないにもかかわらず、デザイナーさんに連絡が取れないと言う。僕も他の仕事で忙しいが、困っている時はお互い様なのでまぁ仕方ないと思って引き受けた。

*  *  *  *  *  *  *

編プロに行って、AB版2ページ(見開き)の色校正のゲラを見ると、それはとてもプロが創ったとは思えないデザイン・レイアウトだった。

例えば、改行が適当でバラバラだ。
クライアントから来るデータは、いい加減な作り方である事が多い。本来は原稿整理の段階で編集者が直すべきだが、原稿整理なんてしない編集者も増えている。そうしたいい加減な原稿をデザイナーがそのまま流し込んでしまったんだろう。

あるいは、「ジャスティファイ」という機能を使っていないために、1行1行、行の長さがバラバラだ。
そういうデザインを狙っているなら理解できるが、テキストデータとバックの画像がタイトに組み込まれているデザインなので、デザインのコンセプトから見て、狙ってバラバラにしているとは思えず、絶対におかしい。いい加減に考えて配置されていのだ。

版面もめちゃくちゃだ。
柱は、裁ち落とす際に切れてしまう可能性がある場所に配置されている(小口裁ち落としから約2mm)。
また、いわゆる「無線とじ」と言われる製本の雑誌だが、ノドから5mmくらいのところに文字が配置されているために、雑誌として仕上がった時にその部分は読めないか読みづらい(しかももう片方のページは、ノドから10mmくらい空いている)。

これはパッと見て気がついた事であり、細かく見ればおかしい点はまだまだ書き足りない。僕が日常で付き合っているデザイナーたちにこのデザインを30秒ほど見せれば、10人中10人が同じような指摘をするだろう。それほど基本的な事で、パッと見るだけで気がつくことだ。

あまりにも酷いので、デザインをできるだけ活かしながら、レイアウトはすべてやり直すことになった。

*  *  *  *  *  *  *

断言するが、僕はこの仕事を担当したデザイナーをプロとは呼ばない。この仕事ぶりを見れば、僕が仕事を依頼する事はないだろう。

それでも編プロは「まだフリーランサーになって数カ月だけど、それまで1年間は編プロで有名な版元の雑誌を担当していたし、なかなか良いデザインする有望なデザイナーなんだ」という。

なるほど、バックに使っている素材などは、僕のセンスにはない。
ただ、そもそもバックに使っている素材は、どこかの素材集から借りた画像を単純に配置しているだけだし、こんな程度のデザインは、正直言って気の利いた素人でも出来る。
仮に、都立高校に通いながらデザインの勉強をしている僕の娘が作ってきても、たぶん駄目出ししただろう。実際つい最近も、「版面」がいい加減だったデザインに対してアドバイスをしたばかりだ。
あるいは、僕が広告制作会社で働いていた頃に、若いデザイナーがこれを作って先輩のところに持って行けば、ビリビリに破られて作り直しをさせられているかも知れない。
そういうレベルだ。

ただ僕に言わせれば、今回のトラブルについて、デザイナーの責任なんてほとんどない。
はっきり言って、これは編集者もしくはディレクターの責任だ。
色校正が出るまでに、何度か校正ゲラを確認しているらしい。その時点で、こんな初歩的で重大な欠点に気がつかない方がどうかしている。

もし本気で有望なデザイナーだと思っているなら、仕事をしながら基礎的な技術についてきちんと教えて育ててあげるべきだ。自分でそれが出来ないなら、ベテランのデザイナーさんに別の仕事で割りのいいギャラを払ってでも、若いデザイナーさんを育てることもお願いすべきだろう。あるいはギャラを半分に分けて、間にフリーランスのベテランのディレクターを入れて、若いデザイナーが足りない点をフォローしてもらったっていい。
仮にそれで編プロの利益が少なくなったとしても、それが出版業界の、人材への投資の一つの在り方だ(少なくとも昔はそうだった)。

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以前、この編プロを経由して広告の仕事をしたときも、撮影した写真がクライアントの要望に応えられず、スッタモンダした。最初からちゃんとしたカメラマンに頼めば無事に済んだにもかかわらず、「安物買いの銭失い」のようなカメラマンを手配したために起きたトラブルだった。

その仕事の時、僕は同時進行していた仕事が忙しく、うっかりメールを読み飛ばしてしまったことがある。
そもそも、「忙しいから」と断ったのに、「どうしても」と頼まれたから請け負った仕事だ。先に請け負った仕事を片付けてしまおうと、そっちの仕事に集中していた時に届いたメールだった。しかも、用件をまとめてメールをよこす人ではなく、何か思い立つと数行のメールを頻繁にくれるタイプの人だった。

メールのやり取りの中で、僕がつい「スケジュールがタイトなので、こちらではミスがあっても責任とれないので、きちんと校正を見てください」と送ったら、「言われなくとも、編集者が校正を見るのは当たり前で、そちらに責任転嫁する気はない」とプライドを傷つけてしまったということもあって、そんな僕の態度が気に入らなかったのかもしれない。
(余談だが、事前の雰囲気で危険を察知して指摘したのだが、実際に校正をろくに見ていないのは、今回のデザイナーの仕事ぶりを見れば明らかだ)

まぁ僕のミスは間違いないので、文句を言われても反論できないのは仕方ないが、やはり忙しい時に信頼関係のない編集者と仕事をするのは危険だと痛感させられた。

ところが、前述したように撮影した写真がスッタモンダしてトラブルになったとき、クライアントと編プロから相談されて、大事にならない方法で事を収め、最終的にはデザインを含めて気に入ってもらった広告に仕上げたために、編プロの態度も一変した。
お陰ですぐに別の仕事を依頼されたが、他に進めている仕事があるので断った。

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ギャラは安い、スケジュールはタイト、校正はろくに見ていない、素人のようなスタッフたちばかり、信頼関係もない。
僕の20年の経験では、広告でも出版でも、そういうやり方では良いものは出来あがらない。

前のカメラマンの時のトラブルも、今回のデザイナーとのトラブルも、つまらないことで余計な予算とエネルギーをかけるくらいなら、どうして端っから、ちゃんとしたギャラでちゃんとしたフリーランサーに依頼しないんだろうか?

ちゃんとしたフリーランサーというのは、例え少しくらい安いギャラでも、その編集者との信頼関係が出来ていれば請け負うものだ。
技術があれば、時間の許す限りタイトなスケジュールにも応じてくれるだろう。
経験によって危険を察知できるため、版元や編プロにとって耳の痛いと思うような指摘もズバズバと言うだろうが、それによって助かる事も多いはずだ。
頼まれれば、若いフリーランサーと交流を持ったり、アドバイスを送る事も惜しまないだろう。

もちろん、安いギャラで若いフリーランサーたちにチャンスが与えられている事を全面的に否定する気はない。むしろ、そういう若いデザイナーが成長するためにも、きちんとした目を持った編集者や、ベテランのフリーランサーの存在が、何よりも大事なんだと思う。

*  *  *  *  *  *  *

「間もなく、貧しく」だけを最優先にするやり方は、結果として出来の悪い出版物を世に送りだしているだけで、出版文化に貢献しているとは思えない。「美しさ」がなければ、出版物としての完成度は高まらない。
世の中に出回っている出版物を見回しても、大手版元の雑誌や大手企業の広告ですら、腹立たしくなるほどレベルが低いものを見受けるようになった。
そんな出来の悪い出版物が、読者の活字離れを加速させる一因となっていると僕は考えている。

インターネットに比べてスピード感で圧倒的に劣る紙媒体だが、「読みやすさ」「視覚デザインの幅の広さ」は出版物の利点の一つであり、webデザインよりも勝っている点が多い。
にもかかわらず、出来の悪い読みづらい出版物を世の中に出すというのは、出版業界の自殺行為だ。

出版不況はたしかに構造的な問題が多いのだが、「活字離れ」「インターネットの普及」のせいにしているだけでなく、現状のシステムの中であっても、金を払うだけの付加価値を加えられていない原因を編集者たち自らが作り出しているという実態を、もっと客観的に受けとめるべきだ。

そして、版元や編プロがつねに「間もなく、貧しく、美しく」を求めるときに、それを創り上げるフリーランサーに対して、何を与えてくれるんだろうか?
時間も予算も出せないなら、せめて知恵を出してほしい。

*  *  *  *  *  *  *

このブログ、最近は知り合いで読んでくれている人が増えてきているみたいだ(その割りにコメント少ないけど……)。ここで書いた編プロも見ているかもしれない。もし見ていたら、もう仕事の依頼は来ないだろう。
それは仕方がない。

ただ一つ言いたいのは、僕はその編プロの事だけを批判したくて書いているわけではない。
こういう仕事が確実に増えてきているという現状を、出版業界の他の人にも知ってほしいと思ったから書いた次第だ。

こんな僕ですが、良かったらぜひ仕事ください。


 ♪子ども騙しのぉモンキービジネス〜
  粋がったりビビったりして ここまで来た〜♫


2009年6月15日 (月)

出版研究集会のおススメ


僕が所属している出版ネッツは、出版労連という出版労働者の団体が上部団体になっている。
その出版労連が、毎年6月〜7月に「出版研究集会」という研究会を開いていて、一般の人も参加可能なので、今日はそのお知らせ。

*  *  *  *  *  *  *
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※上の画像をクリックすると、PDF画面にジャンプしますので、プリントしたい人はぞうぞ。

出版関係者にとってはどれも興味深いテーマだと思うが、僕が個人的にお薦めするのは、6月25日の「グーグル集団和解の問題点〜著作権の、今何が問題なのか〜」と、6月26日の「〜知ってますか?隣の人の働き方〜下請法を使って権利を守る」の2本だ。
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「グーグル集団和解」というのは、知っている人も多いかもしれないが、簡単に説明すると、検索ポータルサイトなどを運営しているグーグルが、書籍や雑誌などの著作物をデータベース化してネット上で公開し、そこで得た収益を著作者に還元するということを、アメリカの著作者団体と結んだ和解のこと。
で、アメリカのことだけなら、アメリカが勝手にやってくれればいいんだが、この和解には、アメリカの著作物に限らず、日本などで発行された著作物まで含まれていて、ベルヌ条約という条約を締結しているすべての国の出版著作者は、勝手に集団訴訟の仲間扱いされて、その和解に同意したことになっている。

もちろん、自分は和解したくないという人もいる。
ところが、この集団和解から離脱したければ、自分で手続きをしないといけない。勝手に和解しておいて、和解した人間たちが自分たちの著作物だけを許可するのではなく、和解したくない人間が、いちいち自分の著作物を和解離脱のリストの中に登録しなくてはならない仕組みになっている。

もう少し詳しく知りたい人は、下記にサイトを参考にどうぞ。

■出版労連声明「Googleと米国出版社協会および著作者団体の和解合意について」
http://www.syuppan.net/modules/news/article.php?storyid=76

■日本ビジュアル著作権協会「グーグル書籍検索和解案からの集団和解離脱に関して」
http://www.jvca.gr.jp/oshirase/oshirase20090430_1.pdf

■出版流通対策協議会(流対協)のまとめサイト
http://homepage2.nifty.com/ryuutaikyo/top_contests.htm#090420

要するに、僕の著作物を今後グーグルが勝手にアメリカのネット上で公開しても、文句を言えないってことになってしまう。
僕がこれまで印税契約した本なんて3冊しかないし、あまり関心は高くなかったが、ためしにこれまで関わった雑誌・ムック・書籍などを、グーグルの和解離脱の登録ページから検索してみた。この検索で引っかかったものは、グーグルのデータベースの対象になっていることになる。
で、調べてみると、印税契約をしていなくても、自分が関わった書籍が結構出てくる。印税契約していなくても著作権は自分にある場合もあり、意外とデータベースの対象になっていることが分かった。

出版関係者は、印税契約していなくても、自分の関わってきた出版物を検索してみるといいと思う。
サイトはhttp://www.googlebooksettlement.com/

僕は、著作物というのは、著作権者の権利侵害にならないように配慮した上で、適度に解放されるべきだと考えているんだけども、それにしても、今回のグーグルとアメリカの著作者団体の和解というのは自分勝手な行為だと腹が立っている。

まぁ単純な話ではないので、グーグルの狙いは何で、著作者にとってのメリット・デメリットはどこにあるのか、今後何が問題点となっていくのか、その辺をじっくりと整理するためにも、6月25日の分科会はぜひお薦めしたい。

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もう一つは、「下請法」についてだ。

以前から、このブログでもある程度の回数をかけて、しっかりと下請法について解説したいと思っているが、なかなか実現できなかった。
とにかく、出版フリーランサーは、クライアントの無茶な要求や不利な契約内容があったとしても、この「下請法」によって保護される可能性がたくさんある。
以前、mixiで知ったかぶりをした人から「自由競争、自由契約が基本の資本主義国家である日本の経済活動なんだから、個人事業主だろうと自己責任だ」と議論を吹っかけられたので、下請法について説明したんだが、意外に下請法について知らない人が多い。長い間フリーランスをやっている人の中にも、誤解している人がいるようだ。

いずれ、本当に解説するつもりではいるが、僕のことだからいつになるか分からないので、もし興味のある人は、ぜひ6月26日の分科会に参加してほしい。
ちなみに、この日の分科会は、出版ネッツの担当分科会なので、フリーランサーがたくさん集まると思う。

*  *  *  *  *  *  *

仕事の具合にもよって全部に参加できるか分からないが、少なくとも上で薦めた25日と26日の分科会には参加するつもりだ。

そろそろ、次の仕事で忙しくなりつつある。
ちょうど「浅草においでよ!」の今年度版も動き始めた(8月初旬発行予定)。

この夏は、大いに仕事をしようと思う。


ということで、出版研究集会の会場でお会いできるのを楽しみに。

 ♪会いたい いますぐ
  会いたい とても〜♪




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2009年6月 5日 (金)

大河ドラマ『天地人』の特別展示会……の図録


最近、浅草以外の仕事を紹介していないんで、何か出版物でもと思っていた矢先に見本誌が届いた。

今年のNHK大河ドラマ『天地人』に関連して、六本木の東京ミッドタウンにあるサントリー美術館で、「天地人展」という展覧会が開かれている。

この図録の制作に携わった。

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90年代頃から、どうもNHKの大河ドラマも面白みに欠けてきたというか、良作と駄作の差が激しくなった気がする。ただ、大河ドラマっていうのは、最初はつまらなくても後半に驚くほど面白くなることもあるので、開始当初に面白くないと思って全部を見なくなったとしても、ところどころチェックしたり、あるいは総集編的なもので追うことにしている。
だから僕としては、三谷幸喜作品だっていうことで見続けた2004年の『新選組!』以来、久しぶりに大河ドラマを見続けているのが、今回の『天地人』だ。

最初は、妻夫木聡の台詞回しの下手さにどうなるかと思ったが、ようやく3月頃、ドラマとしては最初の盛り上がりである、上杉家のお家騒動「御館の乱」くらいからドラマの出来も落ち着いてきて、面白くなりつつある。
主人公である直江兼続は、実際にはもっと知的で思慮が深く、あるいは狡猾なことも平気できる人物だったと思うが、典型的な可愛い現代っ子の顔をした妻夫木聡が、これからその辺をどう消化しながらドラマを進めるのか、楽しみの一つだ。

最近の大河ドラマの傾向でもあるが、本来の歴史のダイナミズムを物語の表面だけに利用して、話の核を主人公とその周辺に集中させることになっていくのか。それとも、あまり女性には受けが良くないようだが、かつての大河ドラマのように、スケール感の大きな作品になっていくのか。
過去に駄作だと思わせた大河ドラマは、その辺のバランスが悪いという共通点がある。原作や脚本の本質的な面白さ、役者のキャラクターと演じる役柄の距離感など、演出家がこれらを見極めながら、どちらの方向に持っていくのか、大河ドラマの演出の妙味でもある。昨年の『篤姫』は、幕末という視聴率の上がらない時代背景を考慮して、徹底的に主人公である篤姫と、演じる宮崎葵のキャラクターにクローズアップしていった。そのお陰で、宮崎葵を見慣れているNHK視聴者や若い人をひきつけて、視聴率も好調だったようだ。それはそれで作品の出来としては良いのかもしれないが、話の展開がメロドラマ的になりすぎてしまったため、幕末というもっとも面白い時代のダイナミズムは失われてしまい、4月か5月頃には見るのをやめてしまい、面白そうな回と総集編だけ見ていた。

「天地人」の場合はまだ、どっちに転がしていくのか今ひとつ方向性が見えないのだが、どちらになっても成功する可能性はあると思う。せっかく半年見てきたんで、これからもっといい作品に仕上がってほしい。

*  *  *  *  *  *  *

ということで、サントリー美術館で開かれている「天地人展」では、直江兼続や上杉家で使用されていた鎧甲冑、武具、刀剣から、屏風絵、書状、巻物、着物、調度品など、様々な歴史的文化遺産を数多く展示している。

その展示品や解説を一冊にまとめた「図録」で、一応「本文デザイン」という肩書きになっている。実際には、何人かの若手のデザイナーさんやオペレーターさんたちが活躍してくれていて、僕はいつものように「オッケー係」みたいなもんだ。
「アートディレクター」なんて言い方もあるが、そんなに立派なもんじゃなくて、実際、僕が一人で仕上げたページなんて、たぶん数ページ程度だし、僕が作ったラフのまま進んだのも、ノンブル(ページ番号)と柱と、コラムのデザインくらいじゃないかな(笑)。名前の載っていない若い人たちの力があってこその作品だった。

興味のあって「天地人展」に行かれた人は、会場で販売していると思うので、よかったら手に取ってみてください。

 天地人展「天地人―直江兼続とその時代―」
 東京展期間:2009年5月30日(土)~7月12日(日)
 東京展会場:サントリー美術館
 東京展入館料:一般1300円(前売1100円)、
        学生1000円(同800円)、中学生以下無料
 新潟展期間:2009年7月25日(土)~9月6日(日)
 新潟展会場:新潟県立歴史博物館
 新潟展入館料:一般1000円(前売700円)、
        学生700円(同500円)、中学生以下無料


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2009年5月29日 (金)

今度の週末は、浅草でスタンプラリーでもいかが?


数日前の記事でも少し触れたが、今週の土日、浅草の浅間神社前では「お富士さんの植木市」が開かれる。
写真が撮れれば改めて詳しく紹介するので、とりあえず詳しく知りたい場合は、→浅草観音うら一葉桜振興会のサイト←を参考にどうぞ。
毎年、5月末と6月末に開かれており、今年は今週末と6月27〜28日に開かれる。

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今度の日曜日の浅草は、もう一つイベントがあって、それが「隅田川水面の祭典」。
こちらは隅田川の浅草側、東武線の鉄橋から桜橋までが会場となって、水上スキーや水上バイクのエキシビションが開かれるらしい。

それ以外はよく分からないイベントなんだが、11時30分頃〜15時頃に開かれているとのこと。

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*  *  *  *  *  *  *

で、その二つのイベントを結びつけるのが、「浅草・隅田川散策ラリー」。
雷門前にある「浅草文化観光センター」をスタート地点にして、「水上バス乗り場」→「水面の祭典会場」→「今戸神社」→「お富士さんの植木市」→「奥山おまいりまち」→「雷門田原」の順に7カ所を巡って、再度「浅草文化観光センター」に戻って時間内にゴールすると景品と交換してくれる。

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上の画像は、当日配られるスタンプシート。クリックすると大きな画面になるので、参考までに。

このスタンプシートは、先日、急遽デザイン頼まれて僕が作ったもの。まぁデザインと言うほどのものじゃないけども……。
スタンプシートは、「浅草文化観光センター」でしかもらえないので、必ず「浅草文化観光センター」からスタートしてほしいとのこと。くれぐれもお間違いなく。

*  *  *  *  *  *  *

ということで、今週末は、「読書サロン」で泊まり込みをして、昼に戻って急いでお富士さんの植木市にかけつける、という強行日程。
それまでに紹介できる本を見つけなきゃいけないし、全然暇じゃないぞっ。

なんてことを考えて、いま外を見たら雨が上がっていた。
去年、エンジンではなくベアリングがいかれて、突然動かなくなったオイラのポンコツスクーターは、その後とうとう潰れちまった。今月、新しい相棒が届いたが、その話は来月になってから。

せっかく雨あがりの朝焼け空だけど、新しい相棒に乗ってる余裕はない……。


【PostScript】
RCのライブは本当に楽しかった。ライブと言うより、まるでパーティのようだった。そう、パーティという言葉がよく似合っていた。そして「雨あがりの夜空に」は僕たちのパーティに欠かせない定番ソングだった……なんて湿っぽい締め方は臭くて似合わないので……
今日もビンビンにキメて、ぶっ飛んで朝飯作るゼ!
オ〜ルァイっ!


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2009年5月28日 (木)

つんどく……だけでは済まされない


先月半ばから今月半ばまでかなり忙しかったが、今年はそれ以外も割と忙しく過ごしていることが多い。
暇だったのは4月の初めから半ばまでで、あとは何だかんだと忙しかった気がする。

そんな忙しさもようやく落ち着き周りを見渡すと、仕事部屋中、机中が書類や本、雑誌、ゴミの山だった。さらにパソコンもデータが散乱していたり、不必要で余計なものがたまっている。メールも未読が1000通近く……。
毎度のことながら、忙しさの後の整理は苦労する。

ということで、この数日、片付けをしていて、今日は散乱していた本や雑誌がようやく片づきつつある。

*  *  *  *  *  *  *
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いつ頃からか、「いつか読もう」と山積みにしておくだけで読んだ気になることを「積読(つんどく)」と言うようになった……と思っていたら、この言葉、実は明治時代に普及した俗語らしい。明治に普及した言葉だとすると近代文学の世界などには出てくるのかもしれないが、残念ながら僕は文学青年ではなかったし、1〜2年前まで知らなかった。

音の響きもいいし、たしかに「積んどく」だけで満足できる部分もあって、なかなか秀逸な俗語だと思う。
僕の場合、映画や芝居の関係の出版物、雑誌、劇場パンフレットなどは、買っておくだけで一度も開かないで何年も経つことが多い。とりあえず買っておかないといけない気分になるけど、書いてあることはパラっと見れば大凡見当がついてしまったり、あるいは急を要さないので後回しにしたり……。
まぁとにかく、僕と同じような仕事をしている人は、十中八九、「積読」の本が常に机や書棚に積まれていることだろう。

仕事の資料も含めて、いつも数冊の書籍や雑誌を並行して読んでいるが、読むべき本がたくさん貯まっていても、買おうと思う本はすぐに買っておくことにしている。
仕事の資料などで「この本は1回読めば十分」という場合だったり、よほど値段が高くて手が出ない場合だったり、そういう時は図書館で借りるが、基本的には読もうと思う本は買う。
もちろん仕事でいただいたり、取材経費として買えることもあるが、本が売れないという時代に、せめてそこで稼いでいる人間として買えるものは買わないと、出版業界内デフレ・スパイラルだ。
結果的に一度読めば十分だった本もあるので、贅沢と言えば贅沢かもしれないが、買いたい時に買ってとりあえず山積みにしておくと、数カ月先か数年先か分からないが、いずれは読むことになるので買っておく意義は十分にある。

という思いで、この数カ月で買って貯まったのが上の写真の本。
後ろの雑誌と合わせると、約40冊も「積読」になっていた。

*  *  *  *  *  *  *

鞄に入っている読みかけの3冊を合わせると、1日1冊読んでも簡単には片付きそうにない。しばらくは新しい本を買ってる暇もない。

ただ、あんまり悠長なことを言ってられない。

実は、出版フリーランサーの仲間数人が「読書サロン」なる読書会を月一回開いていて、そこに参加している。とくに決まった本を読むとか、テーマが決まっているとかではなく、自分が読んだ本で紹介したい本について感想を語ったり、自分なりに解説するというゆる〜い読書会だ。自分が仕事で関わった本を紹介してもよく、そういう場合は出版裏事情も聞けるので、フリーランサーとしては有意義な情報交換になる。
ライターや編集者や校正者など参加者の職能も多様だし、それぞれ得意分野も違うので、自分の知らない本に出会うことがあり、お互いに刺激になっている(と思う)。

僕は毎月出られるというわけではないが、この会のお陰で、とにかく月1冊は人に紹介できる本にたどり着くようにしよう、と目標を持つことができた。それまでダラダラと本を読んでいたが、こういう目標を持つと読書にも気が入る。相手が出版フリーランサー、しかもほとんど僕よりも先輩たちというのも、僕にはとても勉強になるところだ。

で、その「読書サロン」で今週末に泊まり込みの読書会を開くことになっている。泊まり込みと言っても、僕以外は呑ん兵衛ばかりなので、要するにそれを口実に終電を気にせずに酒を飲もうということなのだが、それでも数冊は持って行かないと格好がつかない。

ところが、最近の既読した本の中には紹介するような本はなかった。
あと1日半、積読の中から紹介できる本は見つかるだろうか。
暇になったはずなのに、何だか忙しないなぁ……。

2009年5月23日 (土)

オッケー係


以前も書いたかもしれないが、職業を尋ねられたら「出版の編集をしています」と答えている。
ただ、もともと広告の仕事をしていたんで、今でも少しだけ広告の仕事が入ってくる。

広告の場合、ディレクション、デザイン、コピーライティングとか横文字の業務となることが多いが、ディレクションは出版で言えば編集だ。
出版の編集も「雑用係」と言い換えることができるほど雑務が多いが、広告のディレクターというのも雑務が多い。雑務だけでなく、実に幅広い仕事を依頼される。

もちろん僕の場合は紙媒体の広告制作を依頼されることが多いが、それ以外に、ある時はイベントの現場の仕切り役だったり、ある時は雑誌の撮影でスタジオやロケ先の現場監督だったり、そのほか諸々、出版の編集のように打ち合わせやデスクワークに関連した雑務だけでなく、現場に出ての雑務が多い。
こないだの記事でも「一時期、音楽プロモーションの仕事をしていた」と書いたが、これだって、実際にはレコーディングのスタジオで延々と座ってお茶お濁していたり飯の用意をしたり、ライブやイベントの手配をして現場ではアーティストの世話を焼いたり、言ってみればマネージャー兼ローディみたいなもんだ(実際、あるCDのジャケットには「荷物係」とクレジットされたこともある)。

で一昨日は、仕事仲間のピンチヒッターとして、録音スタジオのナレーション録りに立ち合ってくれと急遽頼まれた。

そこで、このブログでは「活字生活」というカテゴリーで、自分の仕事や仕事仲間の作品を紹介しているが、今回は「ディレクター」という仕事の、ホンの一端を紹介したい。

*  *  *  *  *  *  *
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さて、今回もいつもと同様、現場に立ち合って何をするかと言うと……、あまり大したことはしていない(笑)。
一つひとつの作業に対して「オッケェで〜す」と素っ頓狂な声で現場を盛り上げる。そして、「お疲れさまぁ〜」と他のスタッフやナレーターに声をかける。

お調子者がおちゃらけているように見えるかもしれないが、実はこれ、結構重要だったりする。そして僕の「オッケェで〜す」は、結構現場を明るくしている(と思う)。

ディレクターにしても現場監督にしても編集者にしても、結局はスタッフや周りの人たちがちゃんと働いてくれないと何も出来ない。僕は、ディレクターや編集者というのは、スタッフやアーティストたちが、気持ちよく仕事を進めてくれるのようにするのが、何より大切な業務だと確信して仕事をしている。

最近は、広告はもちろん、出版界でもどっちを向いて仕事をしているのかわからない編集者が増えてきた。
最近の出版物は、普通の雑誌に見えて実は企業のプロモーションだったり、広告クライアントの意向に沿った記事の合間に編集部の好きなことを書かせてもらうスペースがあったりと、広告費の存在なしには成り立たない出版物が多い。だから広告も出版もクライアントの意向は重要になってくる。
僕は広告出身だから、今さらそれを否定するつもりなんてまったくない。広告で飯を食ってきてるんだから、クライアント様々だ。

ただ、現場に入れば別。
いい作品(=いい広告)を作るために、クライアントにご機嫌をとるよりも、現場のスタッフたちに気持ちよく仕事をしてもらう方が、結果としてクライアントのためになるはずだと確信している。
少なくとも、事前の打ち合わせになかったクライアントの急な意向を現場に押し付けるときは、クライアントに十分配慮しながらも、それでも現場のスタッフがスムーズに事を運べるように、再度段取りを按排よく組んで、いざ作業に入る時には、みんなに気持ちよく仕事をしてもらう。

だから、作業が始まってしまえばあんまり余計なことは言わず、多少の軌道修正をしながら、出来あがったものに責任を持てる仕上りになりさえすれば、あとは「オッケェで〜す」とOK係に徹していればいい。

僕の場合、ディレクターや編集者としてではなく、一スタッフとして仕事を依頼されることもあるので、そういう立場になって見ていると、編集者が迷いながら仕事をしていたり、どこを向いて仕事してるかわからないようなディレクターだったりすると、とたんにスタッフ全体のテンションが下がるのが分かるし、結果としていいものは出来あがらない。

ということで、今回も、録音スタジオのエンジニアさんや、ナレーションを担当してくれたタレントさんに気を配りながら、「オッケェで〜す」「お疲れさまぁ〜」とお調子者を演じ(?)きって、無事仕事が終わった。

*  *  *  *  *  *  *

ある仕事で、途中で馬鹿馬鹿しくなって投げ出そうかと思うほど、面倒なことがあった。何人かの編集スタッフが、それぞれ好き勝手なことを言ってくるため、こちらが混乱していた。正直言うと、最後まで付き合って仕事を納めたら、スタッフ一覧から僕の名前を外してもらうつもりだった。
もちろん、そんな露骨な抗議をすれば、その仕事先から二度と仕事の依頼は来ないだろう。それでも「これが俺の仕事だって世間様に告知する気になれない」と言いたかった。

だが、仕事の終盤、「今回はご迷惑をかけてしまってスミマセンでした。本当にありがとうございました。全部終わったら、みんなで打ち上げやりましょう!」と編集スタッフの一人から言われ、深々と頭を下げられた。

だから気が済んだというわけではないが、こうやって頭を下げられれば、もう「俺の名前は外してよ」とは言えない。
少なくとも、まぁギャラも悪くないし(ここ重要)、もう一度仕事を頼まれれば引き受けるだろう。

結局、こんなちょっとした会話だけで、スタッフたちの心が晴れたり沈んだりするもんだ。
自分自身の肝に銘じるためにも、書き記しておきたい。


2009年4月 7日 (火)

「浅草寺西側周辺細見図」が御目見得


今日4月7日から、浅草・奥山おまいりまちの一角に「浅草寺西側周辺細見図」という看板地図が、御目見得となった。

*  *  *  *  *  *  *
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実は、この地図のデザインを担当している。
今日立てられたばかりなので、地図の下には「ペンキぬりたて」の文字。

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設置場所は、奥山おまいりまちの通りと、公園本通り(通称・ホッピー通り)の交差する角。
詳しい場所は、→こちらの地図←をどうぞ。

*  *  *  *  *  *  *

本当は別の場所に、この2倍くらいの大きな地図を掲げるはずだったのだが、紆余曲折があってちょっとこじんまりした地図になってしまった。

まぁ近くに行った時にでも、実物を見てみてください。


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2009年2月15日 (日)

お寺の和尚さんが科学を諭してくれました……〈徳本寺〉


今回のタイトル、とくに意味はないけど語呂がいいんで、子どもの時に唄ったじゃんけんの節で読んでもらえれば……。
 ♪せっせっせーのよいよいよい
  お寺の和尚さんが
  かぼちゃの種をまきました♪
って唄の節。

さて今回は、徳本寺というお寺と、そのご住職の紹介。

*  *  *  *  *  *  *

浅草通りと合羽橋道具街の交差点「菊屋橋」から北東すぐに東本願寺がある。東京の東本願派の本山で、寺町であるこの界隈でも、ひときわ大きな敷地を誇る寺院だ。

その正門のすぐ目の前にあるのが「徳本寺」。表から見ると鉄筋4階建ての立派な建物で、一見ではお寺さんとは見えないかも知れないが、荘厳なオーラというか雰囲気がただよっている。浄土真宗東本願寺派ということなので、目の前の東本願寺と同じ系列ということになる。

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このお寺さんにあるお墓で歴史的人物と言えば、佐野善左衛門政言。

佐野善左衛門については、今では一般的に有名じゃなくなってしまったけど、歌舞伎で「佐野物」というジャンルがあったほど、江戸時代には人気があった人物。落語『権助芝居』という芝居噺に出てくる『有職鎌倉山』という狂言は、「佐野物」の代表的な演目だ。コメント欄に詳しく書いたので、興味のある人はコメント欄をぜひどうぞ。
写真が見たい人は、台東区の史跡案内のページを読んでもらえると、お墓の写真もある。

*  *  *  *  *  *  *

この徳本寺のご住職、実は、地質学・天文学の世界では有名なサイエンス・ライターだ。

2〜3年前、仕事で子ども向けの科学関連の仕事をしていたのだが、それまでの僕は完全に“文科系”。そこで、知り合いの科学雑誌の編集部に相談したところ、紹介されたのが徳本寺のご住職・白尾元理さんだ。

こうして書くと、住職の片手間に研究している程度のアマチュアと思われるかも知れないが、それは大間違い。火山や天文に関する書籍も数多く出されているプロの研究者で、専門の写真家としても活躍している。
仕事の打ち合わせでスケジュール調整をしている時も
「え〜っと、お盆からしばらくは忙しいからちょっと無理ですね。え? いえいえ、お盆もなんだけど、いまアメリカの大学の研究チームと共同で研究してることがあって、長期出張でヒューストンに行くんですよ」
という具合。

ちょっと前の仕事だが、白尾さんにご協力いただいた作品が下記のサイトからダウンロードできるので、興味のある人はどうぞ。

ペーパークラフト「月球儀」
http://cp.c-ij.com/ja/contents/3151/moon/index.html

ペーパークラフト「地球儀」
http://cp.c-ij.com/ja/contents/3151/03339/index.html

ペーパークラフト「富士山(火山のしくみ)」
http://cp.c-ij.com/ja/contents/3151/03340/index.htmll

子ども用宇宙科学冊子『宇宙(そら)のとびら』創刊号
http://edu.jaxa.jp/materialDB/detail.php?material_id=78672

ペーパークラフトでは監修をお願いしたが、とくに「月球儀」「地球儀」では、白尾さんのアイデアが満載で好評だった。

*  *  *  *  *  *  *
月のきほんBook月のきほん

著者:白尾 元理
販売元:誠文堂新光社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

上の書籍は、白尾さんの著書『月のきほん』(発行:誠文堂新光社)。
現在、アポロ計画以来の規模で月周回衛星「かぐや」が月探索をしている。そのため月への注目が高まってるが、月について興味を持ち始めた人にはお薦めの本。タイトル通り、月の基本的なことがよく整理されている書籍だ。
見開きで一項目ずつ、とても簡素に説明しており読みやすい。誠文堂新光社は雑誌『子供の科学』の発行元と言えば知っている人も多いだろう。月の入門書としては、さすがに科学系の出版社の書籍といえる良書だ。

他の書籍や資料を含め、僕が月に関する原稿を書くときに、とても参考にさせていただいた。
ということで、本当に僕にとっては「お寺の和尚さんが科学を諭してくれました」というわけ。

*  *  *  *  *  *  *

今回は少し変わった案内だったが、浅草の隠れた著名人を紹介してみた。
白尾さんとは、偶然通っているスポーツクラブが一緒で、時折そこで顔を合わせる。僕よりもひと回りほど先輩だが、ランニングマシンなどでは僕よりもタフ。いつもニコニコして穏やかなお顔からは想像つかない。
いろんな「顔」を持つご住職だ。


【名称】徳本寺
【住所】東京都台東区西浅草1-3-11
【MAP】「長屋界隈」の地図は→こちらをクリック←
     地図上の「22」番がこのお寺

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2009年2月 5日 (木)

自衛隊は自浄できない……書籍『自衛隊員が死んでいく』

前回の記事に書いた通り、僕は、自衛隊という組織は解体的再編をすべきだと考えているが、僕のこの「確信」を裏付けてくれる書籍がある。

今回は『自衛隊員が死んでいく─“自殺事故”多発地帯からの報告』の紹介。

*  *  *  *  *  *  *
自衛隊員が死んでいく―“自殺事故”多発地帯からの報告Book自衛隊員が死んでいく
―“自殺事故”多発地帯からの報告

著者:三宅 勝久
販売元:花伝社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

この本は、自衛隊という組織を防衛論や憲法の観点から否定するものではない。
自衛隊の中で起きている「自殺問題」「虐め問題」「セクハラ問題」を切り口に、自衛隊の組織的体質に焦点をあてたルポルタージュだ。

自衛隊内で起こるこうした問題の背景については、著者の前著『悩める自衛官—自殺者急増の内幕』(三宅勝久 著/花伝社 発行)で詳しく分析されている。一言で言っていいか判らないが、自衛隊員の抱えるストレスが大きな要因となっていると、著者は指摘している。
それについては、僕も個人的に強く感じることがある。若い頃、複数の自衛隊員と友人・知人関係だったが、彼らのストレスが相当なものだったことを憶えている。そのために、酒、風俗、ギャンブルへの執着が強かった。当時の僕はそういう場所で生きていたが、客としてみる彼らは、他の客と比べても異常に執着が強い印象を持っていたし、その後に知り合った元自衛隊員から聞いた話でも、やはり相当なストレスを抱えながら過ごしていたことが伺えた。

本書では、そういうストレスが大きな要因となって起きる様々な隊内の問題について、当事者へのインタビューによって6つの事件を検証し、共通する問題として自衛隊の「隠蔽体質」を明らかにしている。

事件を追求する当事者──たとえば自殺問題では遺族、セクハラでは被害者本人──が、自衛隊に対して実態解明の調査レポートを求めても、自衛隊から帰ってくる答えは、彼らが求めた物とはまったく異なり、およそ期待に答えたとは言えないものばかりだった。
それぞれの問題について、自衛隊は何らかの関与については認めておきながら、およそ身内を庇っているとしか思えないような見解を繰り返している。しかし、その見解が実態解明とはほど遠いものであろうというのは、本書を読めば明らかだ。
また、近年の自衛隊の不祥事に関する対応を見れば、本書が主張する自衛隊の隠蔽体質の存在には説得力が感じられ、一方の自衛隊の見解には話の筋が通っていないと感じられる点が多いことが判る。

自分の組織の中で問題が起きたことに対して、組織内で調査チームを作っても、およそ信憑性など確保できない。自衛隊に限らず、年金問題での社会保険庁の対応を見ても、あるいは一般企業が事故を起こした時を見ても、組織内の調査というのは身内に甘くなるのが世の常というものだ。

そして本書は、こうした自衛隊の隠蔽体質の延長線上には、旧日本軍との結びつきを強く感じさせると訴えている。

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著者の三宅さんと僕は、出版ネッツのメンバー同士であり、フットサルチームの仲間でもある。消費者金融問題を深く追及し、その執拗な追及によって大手の武富士から逆恨みを買い、『週刊金曜日』の掲載記事をめぐって5000万円という巨額な賠償請求という不当な名誉毀損裁判を起こされが、逆に反訴し、見事に裁判に勝った骨っぽいジャーナリストだ。

この2月20日(金)には、三宅さんの講演「自衛隊はいま」が開かれる。上の画像をクリックすると、チラシのPDFデータにジャンプするので、興味のある人はぜひ。
【追記】
2月20日の講演は残念ながら中止となったが、4月15日(水)に延期して行うこととなった。


【書 名】「自衛隊員が死んでいく
     ─“自殺事故”多発地帯からの報告」
【著 者】三宅勝久
【発行元】花伝社 http://www1a.biglobe.ne.jp/index/
【発行日】2008年5月25日
【体 裁】四六判/並製/216ページ
【定 価】定価1575円(本体1500円 + 税5%)
【ISBN】978-4763405203

【講演日】2008年4月15日 18:30〜
【会 場】出版労連
【住 所】東京都文京区本郷4-37-18 いろは本郷ビル2階
【資料代】500円
【主 催】出版労連


2009年1月15日 (木)

『フリーランサーズガイド2009』発行!

よく考えると、このブログではちゃんと紹介したことがなかったが、僕は「出版ネッツ(正式名称:ユニオン出版ネットワーク」という出版フリーランサーの団体(※1)に所属している。
出版労連という労働組合の下部組織だが、フリーランサーは基本的に個人事業主なので、労働組合というより主に職能組合として活動している団体だ。
まぁ出版フリーランサーの互助会のような組織で、編集者、ライター、校正者、デザイナー、イラストレーター、マンガ家、カメラマンたちが所属している。

今回は、出版ネッツから『フリーランサーズガイド2009』が発行されたので、そのお知らせを。

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出版ネッツ所属のフリーランサーのうち約100人を紹介しているガイドブックだ。

この『フリーランサーズガイド』を発行した目的だが、一つは出版関連で働く人たちが、フリーランサーを探すときに役立ててもらうこと。
出版ネッツのメンバーの特徴は、単なるフリーということではなく、所属しているメンバーが、ある程度信頼できるプロフェッショナルであることだ。
誰かの紹介も必要ないし、スキルや実績は関係なく加入できるが、組織的に仕事の斡旋をするわけではないのに、情報交換を主として毎月会費を払っている人たちが集まっているので、結果的にプロフェッショナルといえる人たちが多くなる(※2)。そういう意味では、どこの馬の骨か分からないフリーランサーのガイドブックよりも、少しは信憑性があるだろう。

もう一つは、出版ネッツに所属していない出版フリーランサーに、出版ネッツを知ってもらいたいということ。
出版ネッツの活動については後述するが、若いフリーランサーで出版ネッツのような職能団体を知らない人も多く、そういうフリーランサーに出版ネッツの存在を知ってもらうキッカケになってほしいと思う。

1997年に創刊し、2001年からは毎年発行され、出版ネッツが無料で配布。
もちろん僕も、毎年掲載している。

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出版ネッツは仕事を斡旋する団体ではない。もちろん、そこで知り合ったメンバーと仲良くなり、仕事に繋がるケースもある。実際、この数年に限れば、僕の仕事の3分の1は出版ネッツのメンバーが何らかの形で関係しているけども、それは出版ネッツが組織的に紹介してくれたわけではなく、あくまでも個人間の関係で仕事に繋がったもの。

じゃぁ、何のために出版ネッツに入っているかというと、僕の場合、基本的には情報交換だ。勉強会や研究会を開いて、出版業界の動きを学ぶこともあるし、あるいは取材記者などが所属していることもあって、ジャーナリスティックな講演会を開くこともある。編集者、デザイナー、執筆者、校正者たちのための技術講座を開くこともある。そうした活動に参加すること。

それと、フリーランサー同士の結びつきを強めておこうということだ。
基本的に、フリーランサーは一匹狼的な心意気の人が多いが、やはり個人だけではどうしようもない問題もたくさんある。フリーランサー全体の地位や権利を向上させることも必要だし、業界全体でギャランティなどを上げていく動きも作らなくちゃいけない。それには、個人ではどうしようもない。
近いうちに必ず書こうと思っているが、例えば「下請法」という法律があり、フリーランサーもこの法律で守られるべきなのだが、出版・広告業界は未だに口約束の契約が多く、フリーランサーが不当に扱われることも、よく見かける。こうしたフリーランサーの実態をふまえ、業界全体を健全にしていくことも、大事な活動の一つだ。

このほか、これまでブログで紹介してきた烏賀陽弘道さんや、黒薮哲哉さんたちを支援する活動。それから、具体的なトラブルを抱えたフリーランサーの相談受付もあり、出版社や編プロが不払いした際に相談すれば、具体的なアドバイスをしたり交渉の支援をしたりなど、やはり個人ではなかなか解決が難しい問題にも取り組んでいる。

まぁ基本的には自由なスタンスが好きなフリーランサーの集まりなわkで、あまり堅苦しい団体ではないので、興味のある人はぜひ出版ネッツに問い合わせを。
(僕と直接知り合いの人は、いつでも差し上げますので、声を掛けてください)

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画像をクリックすると出版ネッツのサイトにジャンプします

*  *  *  *  *  *  *

話はがらっと変わるが、いよいよ寒さが本格的になってきたようだ。
年末年始に風邪で寝込んだせいで、年明け早々いろいろと忙しく過ごしている。

そんな中、落語は上野・鈴本の初席、芝居は新春浅草歌舞伎、映画は新宿武蔵野館でリバイバル上映している「蟹工船」と、今年もエンターテインメント生活がスタートした。昨年のこのブログでは落語の話題ばかり書いてしまったので、今年は落語以外のエンターテインメントについても書いていきたい。
仕事では、出版の企画もいくつか立ち上げなくちゃならず、仕事環境も大きく変える予定だ。

今年は公私ともに充実した一年にしたいと思っている。


[注釈]
※1:正確には、職能が出版関連であれば、出版社や編プロの社長でも所属できるし、実際に自分の仕事を会社組織にしている人も所属しているので、フリーランサーだけに限定している組織ではない。
※2:会費さえ払って規約を守るのなら、基本的には誰でも所属することはできるので、職能スキルや実績が加入条件にあるわけではない。


2008年12月18日 (木)

日曜日のTBS『報道の魂』をぜひ見てください。

ちょうど2年前に「オリコンよ、出版人としての恥を知れ!」という記事で紹介した烏賀陽(うがや)弘道さんのオリコン裁判は、現在も続いている。
その後、このブログでは報告をしてこなかったが、現在、高裁で争っている最中だ。

そのオリコン裁判の行方を取材したドキュメンタリー番組が、12月21日(日)にTBSで放送されることになった。

以下、番組公式サイトの転載。

*  *  *  *  *  *  *

TBS『報道の魂』
http://www.tbs.co.jp/houtama/prog.html

言論には言論で応じる時代は終わったのか?

ジャーナリストの記事やコメントに対して、書かれた側がいきなり訴訟を起すケースが増えている。しかも巨額の損害賠償を求めるケースが多く、言論活動封じ込め目的?との批判が起こる例すらある。

ヒットチャートで有名なオリコンは、ある雑誌記事により名誉を傷つけられたとして5000万円の損害賠償訴訟を起した。しかも記事の執筆者や編集責任者は訴えず、雑誌の取材先となったジャーナリストだけを訴えるという手段に出た。こうしたオリコン側のやり方に「口封じまがい?」との批判の声もあった。

1年5ヶ月に及ぶ審理の結果、東京地裁の一審判決はオリコン側の訴えを認め、ジャーナリスト個人に100万円の賠償を命じる内容となった。しかし一方で、判決に首をかしげる人も多かった。「裁判所は、口封じまがいの訴訟を、是認するつもりか・・」と。

米国では、言論封じ込めを目的とした訴訟は「SLAPP」と呼ばれ、訴えそのものが門前払いとなることが多い。言論の自由への悪影響を危惧してのことだ。しかし日本の司法界には「SLAPP」という概念そのものがない。審理が長期化すると、訴えられたジャーナリストは裁判対策に忙殺され、勝ち負け以前に疲弊して活動を封じられることすらある。

番組ではオリコン訴訟判決が生んだ様々な波紋について取り上げ、訴訟と言論のバランスをどう取るべきかを考える。

取材:秋山浩之
撮影:若泉光弘

(引用以上)
TBS「著作権とリンク/3.『引用』について」に基づいて引用
*  *  *  *  *  *  *

オリコン裁判については、これまであまりテレビやマスメディアで大きく報道されることはなかったが、引用文中出てくる「SLAPP」裁判の中でも、かなり重要な裁判と考えられ、ジャーナリストやフリーランス・ライターの中でも注目されている。

こうした裁判では、過去に『週刊金曜日』と三宅勝久さんが訴えられた「武富士裁判」があり、こちらは全面的に勝訴した。ほかに現在係争中では、黒薮哲哉さんの「読売押し紙裁判」というものもある。
どれも、大きな力を持った企業が、自分の都合の悪い事を書く個人のジャーナリストに対して、極めて不当とも取れる民事訴訟を起こし、言論を封殺しようという行為だ。

何よりも許せないのは、公正に言論を闘わせるのではなく、個人ではなかなか抗えない“大きな力”によって、彼らの言論を抑制しようという姿勢だ。僕は何も、彼らが聖人君子だとは言うつもりもないし、彼らの発表しているすべての記事を読んでいるわけではないので、全肯定しようというのではない。ただ、仮に彼らの主張に反論があるなら、オリコンにしても読売新聞にしても自ら主張を発表するメディアを持っているのだから、そこでいくらでも反論すればいいということだ。言論とは、お互いに公平な立場で、公正に闘わせるものだ。
高額な裁判を起こされれば、例えば弁護士の着手金だけでも、基本的にはその訴えられた金額に比例するため、かなりの高額になる。また、フリーランスの立場で、長い間裁判に関わっていると、仕事も手につかない事が多い(この辺りの苦労話については、別の機会に詳しく書きたい)。事実上、個人だけで闘っていくのは不可能で、明らかに一方的に相手の言論を抑制しようという対処だ。

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彼らの事は、出版ネッツのメンバー同士ということもあり、僕も微力ながら彼らを応援しています。

日曜日の深夜放送なので、あまり視聴率も期待できないんですが、良かったらぜひテレビ番組を見てください。そして、こうした横暴な行為が起こっていることを、ぜひ知っておいてください。
よろしくお願いします。

2008年11月21日 (金)

芸者を見に『浅草においでよ!』

お陰様で「浅草においでよ!」は好評のようで、もう手に入りづらくなっているらしい。
もっと早く書かなくちゃいけなかったのだが、「こぼれ話」の続き。

今回は、芸者さんの話……

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これまで仕事を通じて、何度か芸者さんに取材させていただいたり、お話しを聞かせていただいているが、浅草芸者の聖子さんは、僕がとくに世話になっている芸者さん。
僕の編著「浅草散歩ガイド」にも登場していただき、それ以来のお付き合いだ。

僕が聖子さんに取材をお願いしたいと思うのは、聖子さんの日本舞踊が本当に上手いと感じるからだ。

実は、僕の母親が坂東流の名取りということもあり、小さい頃には日本舞踊を習わされたり、大人になってからも歌舞伎や踊りの会で日本舞踊を見る機会が多い。まぁその反動で、あまり得意な分野ではないのだが、とりあえず上手い、下手という単純な評価は的確にできる自信がある。
聖子さんの踊りは、お座敷だけでなく、国立劇場や浅草公会堂などの大きな劇場でも拝見させていただいているが、とてもきれいな踊りだ。
浅草芸妓衆のなかで、とくに「立方」と呼ばれる踊りを担当する芸者さんたちを一通り見ても、1、2と言える踊りだと思う。

何せ、「日本舞踊を仕事にしたい」と考えて一念発起し、高校を卒業して単身上京し、浅草花柳界に飛び込んだという人だ。芸妓になる動機として、「何よりも日本舞踊を!」と一途に思う人はそうはいないだろう。
それから○年、今では浅草芸妓衆の中で人気芸者の一人として活躍されている。

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芸者とは「芸道に邁進する者」「芸を披露する者」だ。
美しい、接待が上手い、ということも重要なのだろうが、やはり芸で客を持て成す技術も、とても大切なのだろうと思う。まぁお座敷遊びをプライベートで楽しめる程の身分ではないので、偉そうなことは言えないが……。

とにかく、そんな思いで、何度か聖子さんに取材のご協力をお願いしてきた。
今回の「浅草においでよ!」では、「粋な街、花の街、浅草さんぽ道」という特集記事の導入インタビューとして、聖子さんにご登場いただいている。

聖子さんのことをもっと詳しく知りたい人は、「浅草においでよ!」を読んでいただくか、浅原須美さんの著書「お座敷遊び」(光文社新書)にも登場するので、興味があればぜひ読んでほしい。

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今回は、聖子さんへのインタビューのほかに、千福さん(写真右)とこず江(写真左)という「半玉さん」のお二人と一緒に、浅草の観光スポットを歩いて紹介する記事も掲載している(半玉とは見習い芸者のことで、京都の舞子さんと同じ)。
とくに「芸」や「エンターテインメント」と関連する史跡などを中心に紹介し、浅草を散歩する際に参考になればと思って企画した。
お二人には、浴衣に素顔という姿で登場していただいているので、そちらも記事の面白みの一つになっている。
(二人への取材の様子は、7月11日の記事でも少し紹介)

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いま浅草では、「浅草大観光祭」という長期のビッグイベントを開催しており、その一環で、中村勘三郎の主宰する「平成中村座」や、「昭和本堂落慶五十周年記念大開帳」(これはすでに終了)なんて催し物をやっている(勘三郎と仁左衛門が登場する「平成中村座」についての鑑賞感も、そのうちに書きたいなぁ……)。
この一環として、明日22日から24日までの3日間、観音様の西側にある奥山座にて浅草芸者さんの踊りが披露される。詳しくは「浅草大観光祭」公式サイトにて。

実は、10月28日、29日は7年ぶりに「浅草おどり」が復活し、芸妓衆の華やかな踊りが披露されたが、それの告知をしようと思いながらついつい遅くなってしまった。

浅草芸者は、浅草の文化活動を支えていたり、浅草観光の手助けとなっている側面もあり、東京の他の地域の芸妓衆と比べて、お座敷に呼ばなくても近くで見る機会が多いというのが、特徴の一つだ。
明日からの3日間に浅草に来れば、今回紹介した聖子さん、千福さん、こず江さんの姿をみることも……。

芸者見物と思って浅草にくるのも、面白いんじゃないだろうか。


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2008年9月 2日 (火)

『浅草においでよ!』文珍さん取材こぼれ話

この記事は、実は「浅草においでよ!」のこぼれ話として、9月2日頃に書いたものだったが、書いている途中で忙しくなったため、「未公開設定」のまま公開せずに埋もれてさせてしまっていた。
約3か月も経ってから、先ほど未公開になっている事に気がついたのだが、せっかく書いたのにもったいないので、書いた時の時間設定のまま公開したいと思う。
[2008年12月10日]

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文珍さんへのインタビューは、急に入った取材だった。
2年ほど前から、浅草の「雷5656会館」で、吉本興業による「浅草花月」というイベントが毎週末開催されていたが、この7月から第4金曜日は「浅金寄席」(せんきんよせ)という落語専門の寄席を開くことになっている。
そこで、急遽それを紹介しようということになり、文珍師匠に取材することになった次第。

編集部から「今度の土曜の夕方に時間作ってもらうことになったから」という連絡をもらったのが水曜日の午後。予習をどうしようかなぁ、音源持ってたっけなぁ、などと考えながらネットを徘徊していると、なんと当日水曜日は、国立劇場で文珍さんの独演会の楽日。電話で問い合わせると当日券が数席だけ残っているということで、急ぎ時間を調整して、国立劇場までスクーターでひとっ走り。

この独演会は、「リクエスト寄席」と銘打って、その日の客から舞台上でリクエストをとり、その演目を披露するという企画。前日まではリクエストは2つだったらしいが、この日は楽日ということで、3つの演目すべてをリクエストで受け付けるというサービスっぷり。
舞台いっぱいの大きなボードに、文珍さんの持ちネタがずらりと50本ほど書かれていただろうか。その中から、手を挙げた客が指名したリクエストを受け、「七段目」「地獄八景亡者戯」「商社殺油地獄」の3本が選ばれた。
僕としては好きな演目である「愛宕山」を文珍さんで聴いてみたかったが、ほかのお客さんたちのリクエストが多く、僕が手を挙げるか迷っているうちに決まってしまった。

いやはや、それしても、その日のリクエストで3本とも決めるっていうのは、かなりすごい事だ。
「う〜ん、たしかに体力と精神力を使いましたねぇ。まぁああいう事で、お客さんが参加する気分を味わってくれて、皆さんが喜んでくれればって思って試みたんですけど、やっぱり疲れますねぇ」
取材の際に、余談として独演会のお話を振ったところ、やりきったという感慨を滲ませながら話してくれた。このサービス精神は、さすが!と言わざるを得ない。

若い頃からテレビで活躍されていた文珍さんは、この数年とくに高座に力を入れており、去年から今年春にかけて、全都道府県での独演会ツアーを実施したばかり。4月には大阪で10日間連続公演を成功させた。
今回の高座、前述したように難しい挑戦だったと思うが、とても軽妙で噺の上手いところを見せてくれた。自信があるからこその企画だったと思うが、やはりさすがの高座だった。

「繁昌亭」の設立をはじめ、最近の上方落語は勢いを感じる。昨年から今年にかけて放送されたNHK朝の連続ドラマ「ちりとてちん」の影響もあるだろう。僕も2年ほど前から再び落語を聴くようになったが、以前に比べても、上方落語の今の勢いは本当にすごい。
生で高座を聴くのは機会も限られるので、あくまでもテレビやDVDで見る事が中心だが、上手い!と感じさせてくれる噺家さんが多い。文珍さんもそうだが、上方の噺家さんたちは、上手くて品がある。このあたりは、歌舞伎役者にも通じるところがあるが、江戸と上方の文化や気質の違いの影響が大きいのだろう。

余談だが、このブログからリンクしているブログ『和、輪、話』の1go1exさんが、「ちりとてちん」の公式ガイドブックの編集をされたこともあり、子どものとき以来だったと思うが、半年に渡ってほぼ全話を見続けた。「ちりとてちん」が、久しぶりに面白い朝ドラだったということも付け加えておく。

来週の金曜日は、文珍師匠が出演される「浅金寄席」の第2回目。僕もうかがう予定だ。

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とりあえず、しつこいようですが、いよいよ「浅草においでよ!」が発行されました。
浅草文化観光センターをはじめ、浅草の至る所で無料で配布されていますので、見かけたらぜひ手に取ってください。

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【2008年12月10日追記】
次回の「千金寄席」は、年が明けた1月16日です。
詳しくは→こちらをクリック←。


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2008年8月21日 (木)

『浅草においでよ!』小里んさん取材こぼれ話

昨日に続いて、『浅草においでよ!』の紹介。

今回は、大きくわけて、噺家さんへの取材記事と、芸者さんへの取材記事という2つが、企画の大きな柱。
噺家さんは、柳家小里んさんと三遊亭歌る多さんによる対談、それから桂文珍さんへのインタビューがそれぞれ掲載されている。

今日は、小里んさんに取材した時の話……

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恥ずかしながら不勉強で取材の際に知ったのだが、小里んさんは「廓噺」を得意とされており、吉原遊郭についてかなり研究されており、造詣が深い。

「目をつぶっても歩けるくらい、頭の中に当時の吉原の街並を思い浮かべることができるようにね。色んな本で調べたりしてね。ま、吉原って街が好きなんだよ」
とのこと。参考にされた本なども教えていただいたが、かなり熱心に研究されたようで、吉原のお話にはかなり熱を込めて話されていた。

浅草育ちの小里んさんは、小学生の頃から寄席に通うのが好きで落語の世界に入ったという生粋の江戸っ子。その上、吉原遊郭を深く研究されていると、高座でも自然と江戸っ子の色気というものが滲み出てくる。

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実は、取材前の予習に動画は見ておいたが、小里んさんの高座はしばらく生で見ておらず、取材後に池袋演芸場まで足を運んだ。この日は、小里んさんの兄弟子で、現役でもっとも好きな小三治も出ているということで、そちらも楽しみに滅多には行かない池袋まで遠征した。

小里んさんの演目は「親子酒」。
どこか亡き小さん師匠の風貌を思わせながらも、小さんの生真面目な芸とは違い、だんだんとグダグダになっていく親父の酔いっぷりがいい。こういうところは小三治も同様で、小さん師匠よりも遥かにいいんじゃないだろうか。

近いうちにぜひ廓話を聴きたいので、浅草、上野で高座のある時にまた足を運ぼうと思ってる。

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「寄席ってぇのは、まぁその日によって出来不出来っていうかな、面白く感じる時とそうじゃないときがあるんですよ。本当に寄席好きになると、下手な落語を聴いても『あぁ、今日のあいつはあんまり良くなかったなぁ』って笑ってられるようになる。そうなりゃ、聴く方も立派な落語通ってことじゃないかな」

取材後、一緒に食事をさせていただいた時の言葉。取材の際に、歌る多さんとの対談の中で、最近は寄席に来て満足できないと、協会や定席にクレームの電話が入ることがあるという話題が出たのだが、その件に触れての一言だった。
子どもの時から寄席に通っていた小里んさんならではの言葉。

僕も、下手な落語を聴かされるとすぐに文句を言う口で、それは落語に限らず芝居でも同じなんで、ドキッとさせられる一言。特に若手なんかは下手なのが当たり前で、たしかに、歌舞伎のようにチケット代が一万数千円するのと違い、寄席に来てちょっと下手な噺を聴かされたからと言って文句ばかりいうのも野暮ってものだなぁと、ちょっと改心。

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そうそう、ちょっと貴重な話を聞いたので、記録として書いておく。

昭和20年代後半、浅草に「新宿末廣亭」の出店があったそうだ。今の国際通り、三平ストアの建物の辺りだそうだが、小里んさんが幼い頃にあったらしい。
もっとも、小里んさんが寄席へ通うようになった頃には閉館しており、小里んさんは当時人形町にあった「人形町末広」(こちらは新宿末廣亭とは無関係)まで通っていたらしい。

念のために「新宿末廣亭」へ確認をしたところ、電話で応対してくれた人も分からず、先代席亭のお身内が電話口に出てくれて、「たしかに、私が小さかった頃に浅草にありましたね。詳しい事は調べてみないとお返事できないんですが……、小里んさんが小学生? それならやっぱり昭和20年代後半の2〜3年だと思います」とのこと。
いつかきちんと調べてみようと思っているので、詳細が分かったら改めて報告したい。

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ということで、長くなったので今日はこのへんで。歌る多さんと文珍さんについても書きたい事があるが、また別の機会に。

とりあえず、しつこいようですが、『浅草においでよ!』が近く発行されます。見かけたらぜひ手に取ってください。

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2008年8月20日 (水)

『浅草においでよ!』間もなく発行

仕事が忙しく、すっかり更新もご無沙汰してしまった。
この間の仕事を一つだけ紹介。

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「浅草においでよ!」平成20年度版

浅草商店連合会発行のフリーペーパー。
昨年に引き続き、企画記事のページを担当している。
今年の企画ページの目次は……

■巻頭対談
  縁ある噺家が語る、浅草の魅力
  三遊亭歌る多 柳家小里ん

■特別インタビュー
  浅草には、江戸の情緒が生きている
  桂文珍

■特集企画
 浅草さんぽ道
  ◆花街を彩る浅草芸者
  ◆半玉さんと歩く浅草“芸道”名所めぐり

■ほか
  ◆浅草サンバカーニバル
  ◆浅草催事カレンダー

企画記事のページのほかに、浅草にある約1200軒の商店の「店名」「電話」「住所」「地図」が載っている。

僕は、この企画記事の、構成・取材・文・デザイン・一部撮影を担当。
それぞれの記事については、明日以降、もう少し詳しく紹介する予定。
とりあえず、今週末くらいから、浅草各地で無料配布される。

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浅草の各店舗で使えるクーポン券もついてるので、良かったら手にしてください。

この仕事が終わったんで、とりあえずかなり落ち着いた。
少しの間、身の回りの整理と休息の日々。


2008年1月18日 (金)

このところの仕事

すっかり年も明けて、年始のご挨拶もしないまま正月も過ぎようとしておりますが、今年もよろしくお願いいたします。

12月、ようやく仕事が終わって暇になるかなって時に、新しい急ぎの仕事が入り、それが終わる直前の年末に実家の家族が倒れて手術&入院があり、その入院期間中に介護の必要な家族の世話、そして年明けには仕事場が変わったり、といろんなことがあった年末〜年明け。

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さて、復帰早々に宣伝になって恐縮だが、もうしばらくすると、僕が劇場用パンフレットに関わった映画が公開される。

ヒトラーの偽札
http://www.nise-satsu.com/

2008年1月19日より、日比谷シャンテほかで公開

魁!!男塾
http://www.otokojuku-the-movie.com/

2008年1月26日より、シネマスクエアとうきゅうほかで公開

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ヒトラーの偽札は、大人の方にお勧めの良作。パンフレットで少しばかり制作協力。
男塾は、原作ファンならぜひ。パンフレットで、解説の原稿や原作者・宮下あきらさん&坂口拓監督へのインタビューを担当。この原稿を書いている最中に、プライベートでいろんなトラブルがあったが、何とか乗り切ることができたのは、宮下あきらさんに男塾魂を注入していただいたおかげだ(笑)。

もし映画をご覧になる予定のある方は、ぜひパンフレットもお買い求めください。

2006年12月20日 (水)

オリコンよ、出版人としての恥を知れ!

この数カ月、公私とも「超」が3つくらい付くほど多忙となり、あまり更新できずに放置しているこのブログだが、緊急事態が発生したので、少しでも多くの方の知っていただこうとお知らせしたいと思う。

以前、このブログでも紹介した「Jポップとは何か」の著者、烏賀陽(うがや)弘道さんが、音楽リサーチの「オリコン」から不当に訴えられた。

以下、烏賀陽さんからのメールをそのまま転載する。裁判所に訴えられてすぐの連絡なので、やや気分が高まって長文になっているが、ぜひ読んでほしい。

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(以下転載)

みなさん 同じ文面を一斉にお送りする失礼をお許しください。

緊急事態が起きました。どうか、みなさんのお知恵、お力を貸してください。記事にしてください。ブログに書いてください。ウエブサイトに載せてください。メールを転送してください。言いふらしてください。

05年12月13日、月刊誌「サイゾー」編集部に損害賠償訴訟の訴状が送られてきました。原告は、音楽ヒットチャートでは知らない人のない巨大独占企業「オリコン」。その企業が、烏賀陽弘道という一個人に対して、5000万円という巨額の損害賠償金を支払うよう求める民事訴訟を東京地裁に起こしたのです。

訴訟の対象になったのは、「サイゾー」06年4月号51ページの「ジャニーズは超VIP待遇!?事務所とオリコンの蜜月関係」という1ページの記事に掲載された烏賀陽のわずか20行ほどのコメントです。

これは、サイゾー編集部からの電話取材に対して、烏賀陽が話した内容を同編集部がまとめて文字化したものです(よって、内容は烏賀陽の原義とはかなり隔たっていますが、そのへんはひとまず置きます)。よって、烏賀陽が能動的に寄稿したものでも、執筆したものでもありません。

その中で、烏賀陽はオリコンのヒットチャートのあり方についていくつかの疑問を提示しています。ここにコメントしたことは、烏賀陽の取材経験でも、音楽業界内の複数のソースから何度も出た話で、特に目新しい話や驚くような話はひとつもありません。(ご参考までに記事をJPEG形式で添付します。1MB近くありますが、すみません。PDFファイルにする方法をしらんのです)

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この訴訟には、いくつか露骨なまでの特徴があります。

(1)記事を掲載した「サイゾー」および発行元「インフォバーン」を訴訟対象にしていないこと。つまり烏賀陽個人だけを狙い撃ちしている。烏賀陽は前述の弁護士費用、訴訟準備などをすべて一人で負担しなければならないことになります。これではフリー記者としての活動を停止し、訴訟対策に専念しなくてはなりません。みなさん、ワタクシは生活費は一体どうやって稼げばよいのでしょう(笑)。

(2)この5000万円という金額は、応訴するために弁護士を雇うだけでも着手金が219万円かかるというおそるべき額です(そんな貯金あるわけないですがな=笑)。裁判で負ければ、烏賀陽はジャーナリストとしての信用を失い、職業的生命を抹殺されてしまうばかりか、賠償金を払えず、社会的生命をも抹殺されかねない恐れがあります。

どこかで聞いた覚えはありませんか? そう。これは、ジャーナリストの批判を封じるための恫喝を目的とした、消費者金融・武富士がかつて行ったのと同じ手法の、恫喝訴訟と言えるでしょう(武富士訴訟ではジャーナリスト側が勝訴し、逆に武富士を訴えて勝っています)。

http://www.kinyobi.co.jp/takefuji

(3)しかも、訴状をどうひっくり返して読んでも、なぜ5000万円の損害を受けたのかという計算の合理的根拠はまったくどこにも書いてありません。ずさん、というより、相手が払えない(そしてビビる)高額であればそれでいいという額をテキトーに選んだ印象を受けます。

(4)烏賀陽は一貫して「レコード会社の宣伝・営業担当者にはオリコンの数字を操作しようとする良からぬ輩もいる=オリコンは被害者である」という立場を取っているし、文意からもそれは明らかなのに、なぜかオリコンはそれを無視し(あるいは理解できず)烏賀陽の記事が自社の信用を損なったと主張していること。

(5)裁判の証拠書類として、烏賀陽が「アエラ」03年2月3日号に書いたオリコンの記事が添付されていました。

http://ugaya.com/private/music_jpopcolumn18.html

これはオリコンのデータとPOSデータ(サウンドスキャン社)のデータが乖離しているのはなぜか?という疑問を提示したものです。この記事も当時オリコンの小池恒右社長の憤激を買いました(社長直々にお怒りの電話を頂戴しました)ので、烏賀陽がオリコンの「好ましからざる人物」にリストアップされていたことは間違いありません(取材拒否も数回あり)。

(6)オリコンは「オリジナル・コンフィデンス」はじめ多数の出版物を出す出版社でもあります。ですから、もし「ウガヤのいうことはウソだ」というのなら、そこの紙面上で思う存分「ウガヤの言っていることはウソです、なぜなら××」と意見を述べればいい。ぼくもまたどこかの媒体で反論します。これこそが正統な「言論」でありませんか。それこそが正当な出版社のすべきことではありませんか。意見が違うものは高額の恫喝訴訟で黙らせる、というのは民事司法を使った暴力に近い。

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みなさん。ぼくはずぼらなので「運動」とか「闘争」とか「たたかい」とかとは縁遠い人間ですが、この訴訟はいくらなんでもひどすぎる。あまりに露骨な言論妨害だ。言論・表現の自由という基本的人権、フリーランス記者を小馬鹿にしている。

もしこの種の恫喝訴訟がまかり通るようになれば、フリー記者には(いや、あるいは社員記者もできなくなるかも)企業批判はまったくできなくなります。雑誌の求めに応じてコメントひとつしても、5000万円なのですよ。コメントすらできないではありませんか。

そんな時代が来てほしいですか?ぼくはいやです。

これが言論の自由へのテロでなくて何でしょう。民主主義の破壊でなくて何でしょう。これは体を張ってでも阻止せねばなりません。

というわけで、みなさん。長々とすみません。お忙しいところ本当に恐縮ですが、どうかお知恵とお力を貸してください。ご希望の方には訴状そのほか資料をお届けします。

どうか無視しないでください。助けてください。ぼくも2,3日前まではこんな話は(けしからんことに)他人事だと思っていたのです。でも、こんな恐ろしいことが、いつ、どこでみなさんの上に厄災として降りかかるかわからない時代になってきたようです。

長文失礼しました。ご静聴に感謝します。

烏賀陽



(転載以上)
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烏賀陽さんの文章にも書かれているが、自らメディアを発行する出版社であるオリコンが、同じ出版人と互いの権利を認め合いながら議論するのではなく、裁判という手段に出て何を訴えようというのか?
ましてや自分以上もしくは同等に権力を持つものではなく、一フリーランス・ジャーナリストを狙い撃ちするなど、決して許されることではない。そもそもこの手の民事裁判などというものは、立場の弱い者が、より立場の強い者に対して、「他に解決する手段がない」という時に用いられるべき手段であり、音楽業界をある意味で牛耳るオリコンと、組織の属さない一音楽ジャーナリストの関係では、まったくこれに当てはまらない。
(まぁこの辺が、しょせんは電通とべったりのオリコンの本質的な体質というもので、出版人というよりも世論調査機関であり世論誘導機関としての有り体だったりするのだが……)

やはり烏賀陽さんが紹介している「武富士訴訟」は、三宅勝久さんというフリーランス・ジャーナリストが、武富士の消費者金融としての不当な貸付や取り立てについて、極めて丁寧に取材を重ねて批判した記事に対して、武富士が個人(と週刊金曜日)を訴え、三宅さんも反訴して、昨年、勝利が確定した裁判だ。裁判所も、「極めて不当な訴え」と武富士の姿勢を批判している。
消費者金融対する、現在の社会的な厳しい風潮や、不当な金利を制限する法律改正などの一連の流れに一役かった裁判だった。

僕は、こうした大企業による不当な裁判を、絶対に許すわけにはいかないと考えている。
これは、「言論・表現・報道の自由」に対する冒涜であり、民主主義に対する挑発行為だ。

これを読んでくれた方は、ぜひ、こうしたオリコンや大企業の悪事を忘れないでください。
そして、どこかで烏賀陽さんの今後を見る機会があったら、応援してあげてください。

よろしくお願いします。

2006年8月16日 (水)

音楽界に何が起こっているのか?(書籍「Jポップとは何か」)

一昨年だったか、「出版ネッツ」主催の講演会に、「文筆生活の現場〜ライフワークとしてのノンフィクション」(中公新書ラクレ)の執筆に参加されたノンフィクション・ライターの方々をお招きしてパネルディスカッションを開催した。その理屈っぽいパネリストたちの中でも、冷静な口調でいながらずけずけ(良い意味でね)と議論されていたのが烏賀陽弘道さんだ。

烏賀陽さんの新刊「Jポップとは何か—巨大化する音楽産業」を読んだ。

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「Jポップ」という言葉を繙こうとすると、その実態が如何に漠然としたものであるか、誰もが悩んでしまうであろう。ポップという言葉は付いているが特定のジャンルを指すわけではない、かつて「渋谷系」という言葉があったように特定のムーブメント(もしくは系統)を指すわけでもない。誰もが漠然と「Jポップ」という言葉を使っているのだ。

この本は、そうした「Jポップ」の定義について、80年代からの日本の音楽シーンを分析しながら定義づけていく、というだけではない。もちろん、「Jポップ」の定義についてもしっかりと分析されている貴重な側面もあるが、それにととまらないのがこの本の最大の特徴だ。

日本の音楽産業の絶頂期(この本によると1998年)を前後して5年ほど、僕は音楽プロモーションの仕事をしていた。ちょうどサラリーマンを辞めてフリーランスになった頃で、広告の仕事をしながら、いくつかのアーティストのプロモーションを手伝っていた。まさに、日本の音楽産業が好況だったときに、そのバブル景気のおこぼれを頂戴していたわけだ。しかし、そうやって業界の内部にいて、そこで起こった個別の事象について理解していても、音楽産業全体に何が起こっているのかを俯瞰して見ることはなかなか出来なかった。

とくに80年代後半から2000年代までの20年弱、日本の音楽産業は劇的に変化した。そこには様々な要因があるわけだが、そうした背景を含めてこの20年の音楽産業全体に起こった出来事を分析したものは、いまだ出てきていないと思われる。つまり、この本が最初ということになる。この本は、僕が点として感じていたことを、的確に線へと結びつけている。
そうした意味において、この本は「Jポップ」という言葉の定義付けに留まらず、日本音楽産業史の分析・検証の資料として、貴重な位置付けになるのである。

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音楽には、難しい理屈は必要ない。好きな曲を純粋に楽しめばいいのだ。芸術とは、本来そういうものだろう。
しかし僕のような小理屈人間は、どんな文化や芸術も、その背景を理解しないと気が済まない。というか、その背景にある“大いなる意思”について知っておかないと安心して楽しむことができないのだ。
まったく不便な生き方だと思うが、そうした生き方は、まだ当分やめられそうにない。

【書 名】「Jポップとは何か—巨大化する音楽産業」
     新赤版945
【著 者】烏賀陽弘道
【発行元】岩波新書 http://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/
【発行日】2005年04月20日
【体 裁】新書判/並製/248ページ
【定 価】定価 819円(本体 780円 + 税5%)
【ISBN】4-00-430945-X C0273


2006年7月 5日 (水)

『浅草散歩ガイド』がいよいよ発売

昨年の5月に企画した本が、ようやく発行された。
浅草を紹介するガイドブックだ。

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「浅草散歩ガイド」

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一冊丸ごと、浅草の全般を紹介している。
アマゾンなどに流す出版社からの紹介文では「初心者から“通”まで」と書いているが、実際には「浅草観光の入門書」として編集した。

[主な目次]
 ○巻頭インタビュー
  なぎら健壱流・浅草の楽しみ方
  「自分だけのガイドブック」をつくるコツ

 ○浅草ガイド
  浅草今昔物語
  サイトでチェック ほか

 ○浅草ランドマーク
  浅草寺/雷門/吾妻橋/花やしき ほか

 ○あさくさ道案内
  アニマル浜口一家の巻/芸妓・聖子さんの巻

 ○お座敷遊び入門
  芸者遊びを学ぶ「お座敷入門講座」の体験レポート

 ○歩く浅草
 ○食べる浅草
 ○憩う浅草
 ○買う浅草
 ○泊る浅草
 ○足を伸ばして下町散策
            ほか

僕は、全体の編集と、一部の執筆を担当している。
今回は、取材先が全部で200件を超すため、10人以上のライターさんが執筆されている。それぞれの店は、各ライターさんがお薦めしたいと選んだ店だ。
僕が執筆をしているお店や記事も多い。とくにコラムなどはほとんど僕の執筆だ。

この書籍のポスターは、キャッチコピーからデザインまで、印刷以外はすべて僕が作ったのだが、

浅草をちょっとだけ、切り取ってみました。

というコピーにした。

浅草のあらゆるところを、本当に“ちょっとだけ”ではあるが、広く浅く紹介している。
このブログでも、これから少しずつ浅草の事を紹介していきたいと思う。

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昨年から企画し昨年の秋に発行する予定だったが、出版社の都合で延期となり、その後、僕のスケジュールと合わなかったりして、遅れに遅れてようやく発行されることになった。
取材に協力いただいたお店や企業・団体、またはこれに関わった多くのスタッフの皆さんには、大変迷惑をかけてしまった。

ともかく、ようやく発行されたので、もし書店で見かけた方はぜひお買い求めください。

【書名】浅草散歩ガイド
【編者】渡部真
【発行】生活情報センター
【定価】1260円(本体1200円+税)
【規格】A5判/並製本/176頁
【ISBN】ISBN4-86126-275-5


【2007年3月1日追記】
せっかく発行した本だったが、約一月ほど前、発行元の(株)生活情報センターが倒産したため、残念ながらこの書籍は絶版となってしまった。今後、版権も含めてどのようになるか未定で、しばらくは初戦にも並びつづけるはずだが、半年ほど経てば一般の書店からは姿を消すことになるだろう。
この本は、出版までの経緯や、今回の倒産・絶版で一部の未払いが発生した事も含め、一部に大きく不満の残るものだった。
いずれまた改めて、納得のいく形で、浅草に関する本を出版したいと思っている。

2006年3月30日 (木)

2月の仕事

実際には2月の仕事だったのだが、ちょうど先日に発売になった書籍があるので紹介したい。


月 刊 男 心

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この数年、倍々ゲームのようにブログを開設する人が増えた。
最初は日記として好きなことを書く人が多かったが、今ではいろいろな活用方法がある。そして、そうした個性的なブログが書籍化され、ちょっとしたブログ本ブームとなっている。
この本は、まさにブログ本だ。

暖かみのある“詩”を公開している吉見マサノヴさんのブログ、タイトルそのまま「月刊男心」で書かれた恋愛詩は84篇と、書き下ろしのショート・ストーリー5篇を掲載している。

眞鍋かをりが委員長を務める「ブログ普及委員会」の公式認定をもらっている人気サイトで、いつも多くの女性ファンがコメントを残している。
著者自身の恋愛経験を元に、何気ない男女の日常に触れた“男心”が、クスリとさせられるオチと一緒に描かれている、まったり感たっぷりの詩集だ。

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愛するパートナーがいてもいなくても、恋愛話で幸せな気分になりたい時がある。
そんなときに読みたい本だ。

ちなみに僕はこの本の装丁と本文デザインを担当している。


【書名】月 刊 男 心
【著者】吉見マサノヴ
【発行】まどか出版 http://www.madokabooks.com/
【定価】1575円(本体1500円+税)
【規格】四六判/上製本/160頁
【ISBN】ISBN4-944235-30-5 C0092

2005年11月 3日 (木)

10月の仕事

7月からある書籍の仕事を進めているのだが、思ったようにはかどらないで時間ばかり過ぎている。
おかげで他の仕事をほとんど出来ずに困った状況になってきているのだが、自分の責任も大きいので文句も言えない。

さて、そんな中でお手伝いした仕事の紹介。

磨け!閃き力
——発明、商品開発、ビジネス、時代先取りへの道

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ソニーで映像機器の商品企画・開発・設計を担当し、その後独立して特許流通アソシエイト、ビジネスコンサルタントなどとして活動している著者による、“閃き”をテーマにした実用本。様々な発想法から、発明、商品化、特許などの知的財産など、あらゆる“閃き”に関する事柄について、135編のコラムが綴られている。

これまで実際にあった“歴史的な閃き”についてもたくさん紹介されていて、それだけ読むだけでも、想像力を刺激される気がする。

版元の言葉によると「〈閃き〉を単なる思いつきにとどまらせず、発明品への具現化、その商品化、あるいはビジネスへの応用、また特許・意匠登録といった知的財産化にまで言及し、広く〈閃き〉を生かす方法がわかる。また、〈閃き〉を生む力をつけることは、単に仕事に生かせるというだけでなく、常識にとらわれることなく発想を広げ、人生を豊かに生きていく力をつけることでもあり、本書はその強力なサポート役となる」とのこと。
たしかに、今の僕は若干仕事が行き詰まり気味であまりアッパーな状態ではないのだが、この本を読み進めているうちに前向きな気持ちになった。

発明に興味のある人、商品の企画などに携わっている人が主なターゲットだろうが、僕のように行き詰まり気味の人にとっても、状況を打開するヒントが隠されているかも知れないと思う。

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この仕事、忙しいということもあって、組版をお手伝いしただけ。
残念ながら、いま抱えている仕事が片づかなければ、他の仕事に手をつけることもできない。
どうなる?どうする?大丈夫か?……

【書名】磨け!閃き力
    ——発明、商品開発、ビジネス、時代先取りへの道
【著者】木村勝己
【発行】まどか出版
【定価】1575円(本体1500円+税)
【規格】四六判/並製本/222頁
【ISBN】ISBN4-944235275

2005年10月 4日 (火)

9月の仕事


6月以来、ずっと仕事紹介を書くのを忘れていた。
ちょうど先月までの仕事で、本日発売の雑誌があるので紹介したい。

別冊宝島1216「親子の時間」

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いま、「親子学習」という学習方法が注目されている。
学校や塾などに任せきりにせず、親が子どもの勉強について面倒を見るというやり方だ。

といっても、昔から「教育ママ」というものはいたし、細かい学習指導はしなくても、学習内容の管理をしている親はいた。
それと、いま言われている「親子学習」は何が違うのかといえば、要するに「普通の親が“教育ママ化”している」と言えなくもない。ただし、「普通の親が」というのは大きな意味がある。

そもそも、親が、学校や塾など教育機関に自分の子どもの教育を任せきりにし過ぎていたと言えるからだ。
子どもの教育は、基本的に家庭が第一であるべきだ。
それを人任せにしていたというのが、そもそも間違っていたと言えるのではないだろうか?
そうした「人任せの教育」に対して、陰山英男氏や小河勝氏、斉藤孝氏などが異を唱え、それが浸透しつつあるのが「親子学習」だ。
陰山氏や斎藤氏などの書籍は読んでそうした動きについて知ってはいたが、これまでくわしく調べたことはなかった。

その「親子学習」の実態を取材したのが、今回の仕事「親子の時間」の特集『親子学習が成功した12のストーリー』だ。
親子学習をスタートさせたばかりの家族、すでに“ベテラン”と言えるほど熱心に取り組んでいる家族、難関の中学受験を成功させた家族、基礎学習だけじゃなく工夫を凝らしている家族など、親子学習を実践している家族を紹介している。


僕はこの特集を担当している。
基本的には特集全体の編集だが、部分的に取材・執筆・撮影なども担った。

ほか特集として、陰山氏や小河勝氏のインタビュー、「お母さん1000人アンケート『子どもと私と私の時間』」など。

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個人的なことだが、たまたまこの夏、6年間離れていた子どもたちが都内に引っ越してきた。
目を掛けられないできたので偉そうなことは言えないが、事実上、いままで子どもたちの学習面の教育について放りっぱなしにしていたために、子どもたちの学習意欲は低いと言わざるを得ない状況だ。
そうした意味で、非常に刺激された仕事となった。


【発行】宝島社
【定価】1000円(本体952円+税)
【規格】A4変型判/並製本/104頁
【ISBN】ISBN4-7966-4911-5
【公式サイト】http://tkj.jp/

2005年9月 9日 (金)

まったり感のある人になりたい……書籍『散歩写真のすすめ』

7月1日のブログで友人が写真を始めたことを紹介したが、彼女に丁度いい本があるので紹介したい。

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数年前から、若い女性の間で写真ブームが起きていたようだ。
HIROMIXあたりの影響のようだが、僕はちょうど写真に対する興味が薄れていた時期だったせいか、そんなブームが起きていることは意識していなかった。
ところが、去年だったか、表参道でお茶をしていると、一眼レフを持った若い女の子がたくさんいる。最初は、モデル事務所や雑誌のスカウトだろうと思っていたのだが、よくよく見ていると別に人物だけでなく好きにシャッターを押している様子。どうやらこれが、若い女の子たちの写真ブームのようだと気付いた。
それ以来、少し意識をしてみると、(ブームは下火になっているらしいが)たしかに一眼レフを持った女の子たちがたくさんいる。
しかも、ブログのブームによって、今年になってからまた増えている気がする。

この本は、そうした写真初心者から初級者にむけて、日常のひと時を切り取って保存する写真の面白さを書いている。“散歩写真”となっているが、「散歩をして撮る写真」として定義するのではなく、出歩いているときに何気ない一枚を撮影することをすすめている。
そしてそれらの作業が、自分自身を見つめることになるのだという。

本のタイトルが示すとおり、写真の面白さを知っている人には、物足りないのは当然だが、僕はこの本を読んですごく懐かしい思いにさせられた。
僕も若い頃には、写真を撮ることで「日常を切り取る作業」がすごく楽しかった時期があったし、いまこうしてブログを書いているのも、日常を切り取り、自分自身を見つめる作業だ。ブログのタイトルどおりである。

この本と写真を始めた友人に刺激され、僕も“散歩写真”を再開しようかとも思ったが、さすがに若い女の子たちにまじってカメラを持ち歩くほど、モチベーションを高めることはできなかった。
まぁ、比較的高画質でとれる携帯電話のカメラで我慢しておこう。

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著者の樋口聡さんは、出版ネッツで一緒に活動をしている先輩である。
男を好きになることは少ない僕だが、この人の「まったり感」は憧れる。
彼のブログ「宿河原日記」もまったり感漂うもので、僕がブログを始めるきっかけとなった一つでもある。

本人もこのブログを見ている可能性があるので、あまり誉めたくないのだが、実は、彼のようなまったり感のある人になりたいと、いつも考えていたりする。
しかしながら、なかなか実践できないものなのだ。

【発行】文藝春秋
【定価】693円(本体660円+税)
【規格】新書判/並製本/184頁
【ISBN】4-16-660450-3
【公式サイト】http://www.bunshun.co.jp/

2005年7月 1日 (金)

“創る喜び”中毒汚染拡大中

一応、クリエイターの端くれとして生きている。

基本的には編集が仕事の中心だが、ある時はデザイン、ある時はライティング、ある時は写真撮影、イラストを描かなければいけないときもある。
器用貧乏という奴で、いろいろできるけど何も極められない中途半端な存在であることは、僕自身にとって若い頃からのコンプレックスでもある。

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僕は社会に出るまでやりたいことが見つからなかった。普通の学生では味わえないようないろんな事を体験したし、多くの人たちに出合うこともできたが、「自分が生きていくためにやりたいこと」が見つからずに社会に出てしまった。たまたま日本中がバブル景気に狂喜乱舞している時代で、学生の就職先は引く手あまたであり、親のコネで編集プロダクションに入社したが、自分がモノを創る立場になったという意識など微塵もなかった。最初は「営業」という肩書だったので、学生時代に培った社交性と適度のいい加減さがうまくいき、なんとなく営業マンとしてやり始めたが、「制作」については制作部の人たちにほとんど任せっぱなしだった。
だから、時折自分でレイアウトの指定や版下作業をしなくてはいけなくなるとパニックになった。頭の中に「創造するための想像」が一切浮かばなかったのだ。そんなときはいつも、「クリエイターには絶対になれない」と痛感していた。

そんな僕が、いつの間にかクリエイターとして、いっちょ前に仕事をしている。
滅多にないが、自分で企画し、自分で取材し、自分で撮影し、自分で原稿を書き、自分でデザインして、校正を除いてすべて一人で完パケまで創って、雑誌に記事が掲載されるなんてこともある。
まったく「創造力」のなかった僕が、こんな事が出来るようになったのは、いくつかの出合いや偶然が積み重なったおかげだ。

そして今の僕は「クリエイターみたいなことが出来る」というかつての僕ではない。
あんなに制作が苦手で嫌いだった僕は、「創る喜び」に目覚め、中毒患者のようにものを創り続けて生きているのだ。

本当においしいモノを食べたときや、上質のエンターテイメントで感動したとき、あるいは愛する人たちと楽しい時間を過ごしたときなども、何とも気持ちのいいものだが、「創る喜び」はそれに匹敵する何ものにも代えられない極上の一時を僕に与えてくれる。
酒やタバコは簡単にやめられた僕も、こればかりはやめられない。器用貧乏で中途半端な存在だが、この世界に入って15年以上経ったいまでも向上心だけは失われていない。
僕はこれからも、何かを創り続けて生きていくだろう。

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さて、今日は僕の友だちが30年前にこの世に生を受けた祝福の日だ。
上の写真は、その友だちに入れたコーヒーの前に佇む湯アンさん。

で、その友だちが写真を始めたいと言っている。
写真は僕に「創る喜び」を教えてくれたきっかけの一つである。

このところの僕は、御徒町にできた中古カメラ屋に足繁く通い、その友人が「創る喜び」の中毒になってしまうことを想像し、一人ニヤニヤして歩いている危ない中年デブ親父と化しているのだった……

2005年6月 6日 (月)

コピー作りに役立つ一冊……書籍『日本語表現大辞典』

今日は、出版フリーランサーの組織である「出版ネッツ」の会議だった。その中で、お互いに関わった仕事について紹介し合う時間を設けているのだが、今回は、3月に『日本語表現大辞典』(講談社刊)を上梓された小内一さんのお話をうかがった。

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「辞典」という通り個人でまとめられた書籍としては大作だ。
どういう辞典かというと、要するに「ある言葉がどういう表現で使われているか」を紹介しているものである。

例えば、「愛」という言葉を引くと、「あいがうつくしい」「あいがきえる」「あいがたぎるゆのよう」などと30例の「愛」に関するフレーズが表記され、さらに、そのフレーズそれぞれに1〜3例の実例が紹介されている。「あいがうつくしい」には……「愛情が薄ら氷のようにきらきら美しい」(円地文子)、「愛は闘争と不幸と不信と猜疑と嫉妬などによって、かえって宝石のように原石から美しく磨き出される」(瀬戸内寂聴)、「男と女の高く美しい愛情の物語が満ち満ちている」(石坂洋次郎)……という具合だ。

一般の人には使い道は少ないのかも知れないが、僕の場合、広告のコピーや雑誌の記事を書くときなどには、非常に役に立つものなのだ。
短いフレーズである程度の表現をしなくてはならないキャッチフレーズやコピーは、最初にコンセプトが決まっているものに付けることが多いのだが、そうしたコンセプトに合った言葉や表現を、無数に考え出してから、もっとも合ったものを選び直すという作業をしなくてはならない。どうしても自分の頭だけでは同じような表現ばかりになってしまう。そのためにいろいろな本や文章を読んで新しい表現方法を身に付けるのだが、それでも限界がある。そういうときには、こうした辞典の存在は、とてもありがたいものだ。

小内さん自ら言われているとおり、選りすぐりの名文を集めたものではない。ご本人の蔵書や「何となく選んだ本」などから、あらゆるフレーズを60,000件ほどピックアップして、さらにそこから20,000件弱に絞り込んだものらしい。そこは、校正者として25年の経歴を持つ著者の機械的作業だ。校正者は、名文であろうが駄文であろうが、その原稿に書かれている言葉や表現について、それが正確なものであるかを冷静で客観的に判断し、編集者や筆者にアドバイスするのが仕事である。
この本の背景は、極めて校正者らしい言葉に対する距離感である。だからこそ、僕のような人間には使いやすいのだ。コピーづくりでは名文などや文学的表現などは、かえって使いづらいことが多いからである。

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会議の後はいつものように飲み会に。
石原慎太郎の下品下劣な言葉遣いが話題となる。

たかが“物書きくずれの政治屋風情”には、人の気持ちを考えて言葉を選ぶなどという行為は無縁だろう。あんな人間を都知事に選んだ都民の責任として、もうしばらく居心地の悪い東京だ。

【書 名】日本語表現大辞典〜比喩と類語三万三八〇〇
【著 者】小内一
【発行元】講談社 http://www.kodansha.co.jp/
【発行日】2005年03月15日
【体 裁】A5判/869ページ
【定 価】4,200円(税込)
【ISBN】4-06-212830-6

追記:
小内さんの『究極版 逆引き頭引き日本語辞典』(講談社+α文庫/'97発行/1,900円)も、同じようにコピーライター必携の一冊である。未読の方は、ぜひ一度手に取ってみてもらいたい。


2005年5月 7日 (土)

4月のお仕事

先月は書店に並ぶような仕事が少なかったので、1冊だけの紹介。


●水のように寄り添う心——女性に宛てた日蓮聖人の手紙

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僕にとってよき先輩ライターの石井政之さんが、日本ジャーナリスト専門学校で講師をした“教え子”である久郷えりさんの著作。彼女はまだ25歳の若き出版人で、昨年、まどか出版から発行された石井さんの『顔がたり』を編集したときに助手として力を発揮してくれたことから、まどか出版の編集長から声が掛かりこの出版が実現した。 日蓮についてまったく知識がなかったという彼女が、日蓮と親交のあった女性たちに宛てた手紙を解釈し、現代でも通用する女性観について紹介している。 彼女が宗教とまったく無関係ためか、その分、無宗教である僕にも素直に人生訓として読むことができ、彼女の女性らしい文面も読んで飽きがこない。 ちなみに僕は、装幀を担当しています。

【著者】久郷えり
【発行】まどか出版
    www.madokabooks.com/
【定価】1260円(本体1200円+税)

2005年4月21日 (木)

自分の甘さを棚にあげる

「最近の版元編集者はレベルが低すぎる。あれじゃただの手配師だ」
「編集技術が身に付いていない編集者は、普段、何の仕事をしているんだろう」
「最近では、編プロの編集者もひどいのがいる」

この数年、僕は公然とこう言ってきた。

これは、編集者に限ったことではなく、ライターでも、デザイナーでも、イラストレーターでも、確実にレベルの低い「専門家」が増えてきている。活字離れという現象の背景には、こうしたクリエーターの質の低さと、そんなクリエーターたちに作られた活字メディアが世の中にあふれかえっていることが、ボディブローのようにじわじわと影響を与えているだろう。

ところが、こんな編集者が増えている原因の一端が、僕自身にあることに気がつかされた。

今日、知り合いの校正者が紹介してくれた組版の仕事で、その校正者、クライアントである編集者、そして僕の3人で打ち合わせをしていた時のことだった。
編集者から「時間がなかったので、このゲラ(校正紙のこと)とそのゲラを付け合わせて、適当に判断してください」と言われた。僕はついつい「分かりました。こちらで判断できるものはこちらで進めますね」と答えてしまった。

すると、知り合いの校正者は間髪を入れず、その編集者にむかって「基本的にオペレーターは、修正指示をそのままに直すのが仕事です。適当に判断しろと言ってもできません。校正者としても、編集者がチェックすることが前提で校正しているので、編集者がチェックしないでオペレーターに右から左で渡されるのは困ります」と言ったのだ。

正直、自分が恥ずかしくなった。

広告や出版(音楽、放送、映像、印刷など)の業界は、きわめて合理的に分業制が確立している。それぞれの専門家・プロの技術が、それぞれのセクションで発揮され、それが集約され1つの作品として出来上がるのだ。オペレーターにはオペレーターの、校正者には校正者の、編集者には編集者の仕事がある。
僕は、編集者の仕事を奪ってしまった。そしてそのことで、その編集担当者が技術向上させる機会も奪ってしまったのだ。

昔、まだ印刷現場がアナログだった時代、整理されずに不明点の多いゲラを写植屋さんに持っていくと、職人のオヤジさんに「分かるように整理してから持ってこい!」と怒鳴られたもんだ。怒鳴ることがいいことだというのではなく、ちゃんと指摘されたからこそ、こちらは読みやすく整理された修正指示を入れないといけないと思ったし、そういう積み重ねで「編集技術」を向上させられたことが重要なのである。
この世界で職人さんの怒声を聞くことは少なくなったが、それと比例するように、質の低いクリエーターと出合う機会が増えている。要するに、クリエーター(とくに編集者)を育てるのは、同じ職能の先輩だけでなく、職能の違うクリエーターたちがお互いに育て合わなければいけなかったのだ。

まぁ、当たり前のことなのだが、それがなかなか実践できない。現実では仕事相手に対して「ついつい」甘くなってしまう。そのほうが自分自身が楽だからだ。
そんなこれまで自分の行動を棚に上げて、「版元が編集者を育てていない」「デジタル化の導入・普及によって、不勉強なクリエーターが増えた」などと他人のせいにしていたことが恥ずかしい。

知り合いの校正者は僕より年長のベテランさんだが、そろそろ僕も「ベテラン」と言われる立場になってきた。「ついつい」が世のため人のためにならないこと、そして自分自身のためにならないことを、もっと自覚して仕事をしていきていきたい。

2005年4月15日 (金)

3月のお仕事

ちょっと遅くなったんですが、僕が関わったもので先月に発行された出版物を紹介します。

●悠遊自適 VOL.2
 

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海外でのロングステイを希望する人たちに向けた情報誌。
1月に創刊して、今号が第2号です。
毎号、世界各地の人気のあるロングステイ先を特集していますが、今回はオーストラリア特集。
知り合いの編集者K氏が立ち上げた雑誌なのですが、僕はデザイン・DTP組版の一部を担当。
僕以外のほとんどのスタッフは、今頃、次号の特集のために海外に行っているはずです。
【発行】宙(おおぞら)出版
【定価】1200円(本体1143円+税)
【公式サイト】http://www.ohzora.co.jp/sf/yuyujiteki/


●新シルクロード 2
 

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NHKスペシャルで放送されている「新シルクロード」の書籍版。
先日、「若い頃、シルクロードに行きたかった」と書いたのですが、シルクロードにも行かずに、そこに行った人たちの原稿をまとめていたりするわけです。でも、写真とか見せてもらうと、やっぱり感動しちゃうんですよね。ちょうど、今度の日曜日(17日)が第4回目の放送です。
僕は、付録のDTP組版を担当。付録も面白いので読んでみてください。

【発行】NHK出版
【定価】1800円+税
【新シルクロードのサイト】http://www.nhk.or.jp/silkroad/

これからも、関わった仕事を随時紹介していきたいと思います。