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【週刊 石のスープ】編集者としてのこだわり〜『自由報道協会が追った3.11』編集後記その2

 有料メールマガジン「週刊 石のスープ」に記事を投稿しました。その一部を公開します。




■「多様性」を表現した構成

 すっかりタイミングが遅くなってしまったが、「自由報道協会が追った3.11」(扶桑社)の編集こぼれ話の続きを……。

 この本は、自由報道協会の設立準備会メンバーであるフリーライターの島田健弘さんが、「東日本大震災に対して、自由報道協会で何か出来ないか?」と問題提起したことから始まった企画でした。詳細は省きますが、紆余曲折があり巻末に書いてあるとおり、有志で行う「被災地プロジェクト」の活動資金として本書の印税をあてるために企画されました。

 いざ企画を具体化する段階で問題になったのが、構成と編集でした。
 読んでいただいた方はわかってもらえると思いますが、本書は通常の書籍と違って、雑誌のような(雑誌と書籍を混ぜたMOOKスタイルの)構成になっています。これは、企画段階から意図していたことでした。
 通常、一つの書籍で何人もの方に共著をお願いする場合、まず核となる記事や編集方針を示して、その記事の方向性に沿ったり、あるいは編集方針に合わせて執筆者に細かいテーマを指定して書いてもらうものです(あくまでも原則論として)。書籍の場合、共著といえども、一つのテーマに沿って一冊の本の中で起承転結をつけて構成し、その書籍に興味を持つ読者に、テーマをぶらさずに問題提起して、何とか手にしてもらうのです。
 しかし、本書の場合は、各執筆者に対してあまり細かいテーマを決めず、それぞれの著者の書きたいテーマ、得意なテーマに合わせて書いてもらう事にしていました。これは、「自由報道協会」という団体の性質を本書でそのまま表現して、読者に体現してもらおうと考えたからです。

 自由報道協会は(この時点では設立準備会でしたが)、そこに所属するジャーナリストや記者達が、一つの思想や哲学、あるいはポリシーやテーマを共有している団体ではありません。もちろん「公平な取材機会」「平等なパブリックアクセス権」「公的記者会見の開放」を求めている点では意識を共有しています。しかし、それは「民主主義を求める」とか「自由な社会を目指す」とか、現在の先進国なら“当たり前”のことを言っているにすぎません。そんな当たり前のことが実現されていないことに大きな問題があるわけですが……。
 ですから、自由報道協会に所属しているからと言って、考え方や、物事の捉え方は、それぞれバラバラです。まとまりがないと言えばそれまでですが、そうしたバラバラなスタンスの人たちが集まっているからこそ、自由報道協会に価値があるんだと僕は考えています。自由報道協会がたびたび使う「多様性」とは、そういう性質をとても良く反映していると思います。
 その多様性を表現するためには、細かい制約を設けずに執筆者にまかせるべきだと考えたわけです。


■編集者は「気配り」が大事

 もちろん、こういう構成にはマイナス面もあります。何よりも統一感がない(笑)。ですから、読者にとっては通常の書籍と違ってより読みづらい構成になっているはずです。雑誌ならば、読者の好みに合わせて、好きな記事を好きなタイミングで読めばいいのでそれほど気にならない場合もありますが、それでもあまりにも違った構成は、やはり読みづらくなるので、各号で、ある程度は記事のテイストを合わせたりする場合があります。書籍ならなおのことです。
 そこで重要になってくるのが、構成と編集になるわけです。


※この後の記事(小見出しのみ紹介)
■編集者の楽しみ
■新たなスタートを切った自由報道協会
■被災地ルポへのこだわり
■「原発」に絡めないと売れない
【おまけコーナー】



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