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10月5日発売「自由報道協会が追った3.11」

9月11日、東日本大震災の最初の地震から半年、アメリカを襲った同時多発テロからちょうど10年目――
僕はその日を宮城県石巻市で迎えた。

全校児童108人のうち、74人が死亡・行方不明となった石巻市立大川小学校では、地震発生の14時46分に関係者が黙祷を捧げていました。

同校では、地震発生直後、小学生である児童数人が教師に「津波が来るから裏山に逃げよう!」と進言しますが、結局、学校側は児童を連れて、川に掛かる橋の袂の高台に向かってしまい、多くの命が失われてしまいました。
津波で亡くなった男の子のお母さんは「生き残った人の話では、うちの子は裏山に逃げようと言ったそうです。その事を先生たちが聞いてくれていれば……。それだけが悔しい」と、半年経っても癒えない気持ちを語ってくれました。
僕は、お母さんの話に目頭が熱くなり、思わずインタビューする言葉を失ってしまった。

そんな僕に仲間がかけた言葉は「記者失格」。
それが僕の今年の9.11でした。

*  *  *  *  *  *  *

さて、本当は9月11日発売を目標にしていた書籍が、だいぶずれ込んでしまったのですが、来る10月5日に発行されます。

タイトルは「自由報道協会が追った3.11」(扶桑社)。

Cover3111_2

自由報道協会の設立準備会のメンバー25人(元メンバー・インターンを含む)が、この半年間、どのように震災と関わってきたか? この半年間をどう考えているのか? 震災とメディアのあり方、震災以降のメディアの変化、そしてこの半年間で被災地で起こった出来事の数々……。

僕自身も2つのルポを執筆し、何枚かの写真を提供していますが、それ以外に、全体の企画と、一部の編集を担当しています。
そこで、このブログでは一足早く、各執筆陣が書いた記事の見出しと、僕が編集を担当した記事の内容を紹介したいと思います。


【巻頭言】
3・11で見えた記者クラブの終焉と自由報道協会の使命
……上杉隆


【カラーグラビア】
Pictures of the Earthquake 自由報道協会が見た3・11

烏賀陽さん、渋井さん、津田さん、寺家さん、西岡さん、そして僕が撮影した半年間の写真を、何百枚もの候補の中から20枚ピックアップし、カラーグラビアにまとめました。


【第1章】 震災&原発事故報道の最前線

 
ネット時代のジャーナリズムと自由報道協会の役割
……神保哲生

震災直後、3月11日の夕方には東京を出発して福島県相馬市の現地に入り、いち早く被災地の情報を伝えたビデオジャーナリストの神保さん。僕も3月12日に神保さんが被災地情報を届けている事を知り、大いに刺激を受け、その後に取材へ行く覚悟を決めました。個人的な事を言うと、神保さんにはこれまでも記者としての心得の影響を受けてきましたが、今回も教えられた記者としてのこだわり。そして、自由報道協会を結成する際のエピソードにも触れ、同協会に対する神保さんの思いと期待を込めてくれています。


「情報の民主化」を目指して 〜“中継市民”に支えられた3・11報道
……岩上安身


ソーシャルメディアが果たした役割
〜被災地を支える〝当事者情報〟の連携
……津田大介

「Twitter社会論」(洋泉社)で、日本のTwitterブームの火付け役となった津田さん。震災直後から「ニコニコ生放送」などに出演して被災地の情報を報道していましたが、4月以降はご自身が、茨城、福島、宮城、岩手などの被災地に訪れて取材活動を続けるようになりました。僕には津田さんがこれほど精力的に被災地で取材するのは予想外でしたので、事前にお願いし、その辺の心境などについても触れていただいています。


東日本大震災とニコニコ生放送 〜ユーザーが見つめたジャーナリズム
……七尾功

自由報道協会の結成当初から、ニコニコ動画の七尾さんと亀松さんは同協会の運営にとても精力的に関わってくれたのですが、この6月で設立準備会を辞されました。しかし、僕たちにとっては今でも大切な仲間であることには変わりません。そこで、七尾さんにお願いして執筆陣に加わっていただきました。震災直後から多くの視聴者に様々な震災情報を提供し続けた「ニコニコ生放送」。NHKなどとの連携で実現したサイマル放送の事などを含め、この半年間に果たした役割を振り返っていただきました。


記者会見で見えた東電の隠したいもの 〜今、市民はどう動くべきか
……日隅一雄

日隅さんは、自由報道協会だけでなく、僕が事務局を務める「会見開放を求める会」など、様々なジャーナリスト団体の運営に関わって、公平なパブリックアクセスを求めて活動されています。今年病気のために入院した日隅さんにお見舞いした際、日隅さんにこの書籍と、公開討論会の参加についてお願いしたときに仰っていただいたテーマが「今、市民はどう動くべきか」でした。このところ日隅さんが掲げているテーマについて、改めて東電会見の総括とともに書いていただきました。


開いた口がふさがらない東電記者会見のトンデモ舞台裏
……木野龍逸


原発NO! イタリア国民投票に影響を与えた福島原発事故
……田中龍作


フリー記者を排除した官邸会見 〜情報公開の遅れが被害を拡大させた
……畠山理仁
 


【第2章】 ルポ12選・震災を追い続けた〝多様な視点〟


世界が注目した「石巻日日新聞」の奮闘 〜ローカリストたちが発行した壁新聞
……渡部真

地震と津波の影響で印刷機が使えなくなったローカル新聞社。津波が引かずに孤立した石巻市は情報が途絶えてしまう。そんな中で手書きの壁新聞を発行し、地元の人達に少しでも情報を届けようと新聞の発行を続けた彼らの意地。実は、4月からたびたび足を運んで取材をお願いしていたんですが、しばらく忙しいと断られ続け、6月になって「何度もきてくれたからな」とようやく時間を作って話を聞かせていただきました。


被災者の命を最前線で救い続けた宮古と石巻の医療従事者たち
……渋井哲也

渋井さんは、この震災以降の被災地取材では、僕との同行のほか福祉系の記者との取材も地道に続けています。そうした経緯もあり、この震災以前からも問題として関心を集め、また震災以降も改めて問われている地域医療のあり方について、今後の問題提起の材料となるように、震災直後の医療体制についてまとめていただきました。混乱する中で、どのように医療体制が維持されてきたのか……。


東北の鉄道は復活できるのか? 〜壊滅した三陸鉄道を訪ねて
……小川裕夫


「マスコミが来ない」岩手県・野田村で見たもう一つの現実
……烏賀陽弘道

烏賀陽さんは4月に岩手県野田村に取材しました。現地の方が「なぜマスコミはこの村に来ない?」と問いかけます。僕も、当時は小さい町や小さい避難所の取材を続けていましたが、一日中テレビに釘付けになって少しでも自分の家族や知人の情報を得ようとする人たちの中には、地元の情報が流れる機会が少なく「取り残された感」を訴える方は沢山いました。そんな野田村で見た現実をレポートしてくれました。


東北の漁村を甦らせる唐桑半島の漁師たちの不屈の試み
……西岡千史


それでも牛と生きる 〜不安におののく畜産農家たちが今求めていること
……上垣喜寛


ゴーストタウンはどこに消えた? 〜人口急増中いわき市の不動産事情
……中澤大樹

中澤さんは不動産を中心にした経済記者。経済記者として、いわき市における不動産価格の変動などについての実態をまとめてもらいながら、先行きが不透明な地域経済について書いていただきました。西岡さん、上垣さん、そして僕の担当した中澤さんは、自由報道協会の中でも若手中の若手です。この3人のルポは、それぞれ得意分野についてまとめてくれたものですので、視点が面白く、僕には決して書けないルポになっています。


気仙沼に自立の風を吹かせろ 〜日本有数の漁業の町復興に向けて
……島田健弘


応募者が来ない!被災者就職支援事業 〜上京した被災者青年を追う
……村上隆保


もう一つの「3・12」大震災 長野県・栄村の被災状況とは
……渋井哲也

3月11日の東北地方太平洋沖地震の翌日、長野県栄村を襲った震度6強の大地震。日本中の関心が、福島の原発と東北の津波被害に集まってしまう中で、被災の状況は隠れてしまいがち。そんな長野県栄村の震災の様子と、今後の復旧に向けた課題とは……。


警戒区域の酪農家が見た希望の光 〜牛に餌やりを続けるエム牧場
……渡部真

何度か紹介している福島県浪江町の牧場のルポです。継続取材を続けていますが、改めて震災直後から半年をまとめました。現在は、「希望の牧場構想」を進行させています。刻一刻と変わる牧場の半年の変化を追いながら、牛飼いの「意地」と少しずつ見えてきた「希望」を紹介します。


コミュニティを重視した仮設住宅「グリーンピア三陸みやこ」を訪ねて
……寺家将太

自由報道協会のインターン1期生である寺家さんは、6月に一人で東北に取材に行きました。しかし、被災者にカメラを向ける事ができなかったと、僕と渋井さんに「もう一度行きたいので、ぜひ連れてってほしい」と直訴。7月に5日間、僕らの取材に同行しました。その時の報告として、仮設住宅に取材した様子をレポートしてくれました。

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この本で取り上げた主な被災地域を地図に落とし込みました。
画面をクリックすると大きな画像になります。
それぞれの記事の位置関係がわかりますので参考にしてください。


【第3章】 メディアの功罪とこれからの可能性


守りたい人を守るために漫才師としてできること
……おしどりマコ

東電・保安院の統合会見ではすっかりお馴染みとなった漫才師・おしどりマコさん。「吉本をクビになる覚悟」というマコさんが、なぜここまで記者会見に参加し続けるのか。マコさんが守りたいと願う「飯舘の仲良し」たちとの出会い、いまの思いなどを、改めてまとめていただきました。


報じられなかった放射能拡散 〜マスコミの機能不全を検証する
……伊田浩之

「週刊金曜日」の記者として活躍する伊田さんは、実は東北大学理学部物理第二学科卒業という経歴の持ち主。専攻は、なんと「素粒子原子核理論」。そんな伊田さんだからこそ、この原発事故には強いこだわりがあったんでしょう。「週刊金曜日」の記事を紹介しながら、原発事故以降、放射能の拡散がどんな様子だったのか、そしてそれを伝えるべきマスコミの報道について検証していただきました。


一人のつぶやきから始まった「子どもたちを守る全国ネットワーク」
……白石草

オルタナティブの市民メディア「OurPlanet-TV」を主催する白石さん。白石さんには、とくに子どもを持つ女性たちや市民運動などが、この半年間でどのように動いたのかを紹介していただきました。「子どもたちを放射能から守る全国ネットワーク」が、ソーシャルメディアをどのように有効活用してネットワークを構築していたったのか。


海外メディアから見た3・11報道 〜マスコミに疑念を抱かない日本人
……重信メイ


「安全神話」を支えたマスコミと東京電力の“癒着”の構造
……上出義樹


取材すればするほど複雑で難しい災害報道
……江川紹子
 


【自由すぎる座談会】
それぞれの“現場”で見た3・11を振り返って

「上杉さんと畠山さんの対談で、あとがき代わりにしますよ」とお願いしたら、二人とも「今さら二人じゃ面白くないよ」と返答。さらに、他のメンバーからも「俺たちも言いたい事がある」とのこと。だったら座談会にしましょうという事で急遽開かれた座談会。上杉さん、畠山さん、小川さん、上出さん、メイさん、渋井さん、田中さん、西岡さん、村上さん、事務局長の昌山さん、インターンの竹口さん、寺家さん、二村さん、そして、司会には僕(本当は島田さんも司会として参加してるんですけどね……と楽屋バレ)。実は話が終わらずに2回にわけ合計5時間に渡る大座談会。よくこんなに簡潔にまとめたもんだと、構成の島田さんには脱帽です。


【あとがきに代えて】
自由報道協会有志による「東日本大震災被災地支援プロジェクト」

この書籍の印税は、すべて「東日本大震災被災地支援プロジェクト」に使われます。このプロジェクトは、自由報道協会の有志によって、被災地で行われる復興支援のためのイベント(例えば、ワークショップ、公開討論会、被災地アーカイブ支援など)です。
6月頃、自由報道協会の設立準備会の中で、「被災地の支援になるような活動をしたい」という声が上がりました。しかし、会見を開くために寄付していただいた運営費を、勝手に被災地支援に使う訳にはいきません。そのため、あくまでも「自由報道協会の有志」という形で実現したのが本書です。25人の執筆陣は、印税をすべてプロジェクトに寄付することに合意して参加してくれました。
その説明をあとがきとしてまとめています。


自由報道協会が追った3.11 Book 自由報道協会が追った3.11

著者:自由報道協会・編
販売元:扶桑社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

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ということで、少々長くなりましたが、「自由報道協会が追った3.11」のことに興味を持っていただければ幸いです。

島田さんと一緒に本書を企画したわけですが、僕個人の思いを書けば、東日本大震災の発生以降、自由報道協会を設立するために協力し合ってきた仲間たちで、何とか本を出せないかと思っていました。
それは、それぞれ報道の携わる人間として、誰もがこの震災に向きあわざるを得なかったし、普段はバラバラに活動する皆が、この震災以降、お互いの「現場」で協力し合って取材活動を続ける姿に、大きな可能性を感じたからです。

これから、出版記念イベントや告知のために、本書の執筆メンバーが各地に露出すると思います。
近いところでは、9月27日(火)に、上杉隆さんの報道番組「ニュースの深層」(CS放送・朝日ニュースター/夜8時から/ほか再放送あり)にこの本の宣伝をかね、渋井さんと僕がゲスト出演し、被災地の半年間を写真で紹介します。本書のグラビアで使われた写真も紹介し、僕の思いを語っています。お時間があれば、ぜひご覧ください。

すでにアマゾンなどネット書店では予約も始まっております。
何とぞ宜しくお願いいたします。

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