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これで「説明責任」? 新聞社の見苦しい「言い訳」

前回の記事を書いた翌日、仕事でトラブルがあってパソコンの前からほどんど離れられず、ひたすらトラブル対応のために時間を費やしてしまった。

実は、まだ仕事のトラブル対応が終わっていないが、今日はプライベートで用事あったので、その合間に先週の続きを書いた。

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北海道新聞の高田昌幸氏が、自身のブログでこんな記事を書いた。

ニュースの現場で考えること
「リーク批判」に対する新聞の「言い分」

産経新聞と読売新聞が、「検査リークの垂れ流し」と言われている新聞各社への批判に対する反論記事を書いているのだが、それを紹介し、そのお粗末さを取り上げている。

高田氏の記事に追随する形になるが、僕も、読売新聞と産経新聞の記事を批判したい。
その前に、今回の「検察リーク」に関しては、高田氏の他にも新聞社側から疑問の声が上がっている。

東京新聞 2010年1月18日
「私説・論説室から 『小沢疑惑報道』の読み方」

また、小沢一郎と政敵である自民党の衆議院議員・河野太郎も、「検察リーク」とマスコミの在り方について疑問を呈している。

河野太郎ブログごまめの歯ぎしり
副大臣がやり残したこと

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さて、高田氏のブログで、読売新聞と産経新聞の記事を一部引用しているが、全文を読みたいので、さっそく各販売店に行って全文を手に入れた(何故か、この記事は読売と産経のweb版では公開していない)。

産経新聞 2010年1月21日「社会部発 リークの根拠とは」

読売新聞 2010年1月23日「とれんど 『関係者』報道」

この2つの記事だ。

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産経新聞(近藤豊和氏・社会部長)は、地検特捜部から取材した過去の体験談を語り、いかに取材しているかと苦労話を書いて、
「事件の内容や逮捕日などを『さあどうぞ』と教えてくれる人などは誰もいない」
と、検察リーク垂れ流しの「疑惑」を否定し、最後に
「『検察のリーク』『検察からの情報による報道の世論誘導』…。こうした指摘の根拠を知りたい。」
と締めている。

読売新聞(藤田和之氏・論説委員)は、
「『関係者』の話に基づく事件報道について、閣僚から発言が相次いでいる。だが、閣僚は評論家ではない」
と、原口総務相に対して抗議する形で切り出している。さらに続けて、
「記者は、多数の『関係者』の話を積み重ね、集めた膨大な資料とも突き合わせて、『間違いない』と確信できる内容を報じる」
と言い訳をして、
「政治家も、記者と同じ取材を1週間やってみればよい。その上で『検察リークを確認した』と言うなら、その言葉に耳を傾けよう」
と締めている。

もう一つあげておくと、毎日新聞の元論説委員長で現在は特別編集委員となっている岸井成格氏も、数週間前のテレビ朝日「サンデープロジェクト」の番組中に、「記者は苦労して丁寧に取材し報道しているので、検察リークを垂れ流している事なんてない」と否定していた。

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しかし、これら新聞社からの反論は、チャンチャラおかしい。まったくもって反論になってない。

産経新聞の社会部長、読売新聞の論説委員、毎日新聞の元論説委員長、いずれも各社の代表として十分の肩書きを持つ。
しかし、その立派な肩書きが悲しくなるほど、情けない「言い訳」しかしていない。「反論」ではなく「言い訳」だ。

僕は、前回の記事で「新聞から出てくる情報は、検察のリークとしか思えない情報ばかりだ」と書いた。そして、それは僕だけではなく、多くの人間が感じている疑問点だ。同様の疑問を投げかけているブログは数限りない。

さらに、東京新聞は論説委員が「当局が記者にリークしたのではないか」と疑問を呈し、北海道新聞の記者は個人のブログで「広い意味でのリークが日常的に行われていることは自明の理だ」と書く。二人とも、新聞記者という立場から「検察リーク」が存在している事を認めている。
また、検察を監督する立場にある法務省側からも、河野太郎が「元法務副大臣」という立場での経験から、「検察リーク」とマスコミの在り方について批判をしている。

多くの市民が疑問を感じ、新聞内部から存在を暴かれ、法務省側にいた人間からも批判される。

これでももし、新聞各社が「検察リークなどない」というなら、もっと説得力のある反論をすべきだ。

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読売新聞も産経新聞も、ともに苦労話を書いている。「こんなに苦労して取材をし、自分たちが正しいと思った情報を記事にしている。だから、リークなんてないんですよ。疑惑っていうなら、その根拠や証拠を示してよ」と言う。

おいおい、産経新聞も読売新聞も、小沢一郎に対して証拠も示さず「丁寧な取材」という名の「疑惑」だけで「説明責任を果たしていない」「更なる説明を」と追及しているんじゃないのか?

読売新聞 2010年1月24日 社説
小沢氏聴取 全面否定でもなお疑問は残る

産経新聞 2010年1月24日 主張
小沢幹事長聴取 異常事態の責任は重大

どちらの記事も、疑惑についての推論や、自ら取材したからということを根拠に、「記者会見の説明では、まだまだ不十分だから、もっと説明しろ」と主張している。
しかし、前回も書いたが、「説明しろ」というなら、もっと具体的な証拠を出して説明を求めるべきだろう。

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現在、今の新聞メディアが小沢一郎に「説明責任を果たせ」という資格があるかどうか、それが問われている。

産経新聞は「検察リークという根拠を示せ」と書いているが、内部からの発言があるのだから、それ以上の根拠も何もない。
こんだけ「疑惑」があるんだから、普段の新聞社の論調で言えば「マスコミこそ、その説明責任を果たすのが義務である」ってことになるだろう。「社会的責任の重大な言論機関として、自ら検察リークがないことを証明する説明責任がある」と言われたら、どう反論するんだろうか?

読売新聞の論説委員に至っては「だったら、お前らも記者をやってみろよ。やってみて『リークあるよ』というなら、耳を傾けるよ」と開き直る。
「新聞記者やってから文句言えよ」っていうのが、読売新聞という世界最大手新聞社の論説委員の発言かと思うと、お粗末極まりない。読んでいるこっちが情けなくなる。
その職業を体験し、そこで証拠を握らないと批判できないなら、あるいは疑問を投げかけることができないなら、ジャーナリズムなんて存在できない。そんな自己矛盾したことを、どうして言えるのか教えてほしい(しかも公称1000万部を誇る媒体の2面という場所で……)。

読売新聞や産経新聞の見苦しい「言い訳」、さらに毎日新聞の岸井氏の主張を含め、これで「説明責任を果たした」というなら、今後、各新聞社が主張することの説得力なんて、まったくないに等しい。

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改めて書くが、僕は小沢一郎なんてまったく信用していないし、小沢一郎に疑惑があるなら、それを取り扱うマスメディアやジャーナリストたちは、きちんと追及すべきだと思っている。
しかし、「疑惑があるよ!」「もっと説明してよ!」と繰り返すだけでは、マスメディアやジャーナリストの役割を果たしていないと言いたいのだ。

これも前回も書いたように、このブログでマスコミ批判をする事は、これまでできるだけ控えてきた。
僕自身が、マスコミの端くれにいるのに、そういう批判をしても建設的じゃないと思っていたからだ。もし外に向かって批判するなら、内側から何らかのアクションをしていきたいと思っていたし、これまで微力ながら、自分なりのスタンスで活動してきた。
しかし、本当に今の大手マスメディア、とくに新聞報道とテレビ報道はお粗末過ぎる。

そんな思いから、官庁の記者会見と記者クラブ開放の運動に、参加・協力してみる事にした。
今後、お伝えできることがあれば、改めてこのブログでも伝えていきたいと思う。


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コメント

>各新聞社が主張することの説得力なんて、まったくない

まったく同感であります。新聞社は小沢一郎に説明責任を要求するなら、同じように自分でリークに関して説明すべきです。私は幣ブログで朝日新聞の反論への批判を書きました。朝日の反論もネットには載っていないようです、あんなに大きな記事なのに。

 やはり新聞社の方でも後ろ暗いのだと思います。メディア批判の声はメディアから嫌われて新聞などには載らない訳ですが、であればこそ原口大臣のメディア改革などは一市民として応援せねばならないと思います。

投稿: zames_maki | 2010年1月25日 (月) 16時42分

zames_makiさん

コメントありがとうございます。また、そちらのブログも拝読させていただきました。
やはり、同じ感覚を持った人はたくさんいるようですね。
今回の異常なほどの新聞社の対応は、「大政翼賛会」の反省がどこに行ったのかと聞きたくなります。
「説明責任」とは何なのか? どこまで説明すれば「説明責任」を果たしたことになるのか?
田原総一郎は、「有罪を認めて自白するような説明をしない限り、新聞の求める説明責任を果たした事にはならないだろう」と新聞各社の「説明責任」の意味について皮肉を言っていました。
新聞各社に質問状を出してみたくなります。

投稿: 真公 | 2010年1月25日 (月) 20時19分

真公さん今晩は。
前回と今回の記事、真剣に拝読させて戴きました。全くもって仰る通りだと思います。
私は、一読者の立場でしか判断できませが、
今回の大手メディアの報道はあまりにも酷いと思います。今回の事でいかにこれらの報道が信用するに足らないと感じました。

私は仕事をしながらラジオを掛けています。TBSラジオが多いのですが、この局には
武田記者と言う方が居まして、今回の検察のリークを以前から問題視していました。
又、上杉隆氏もたびたび放送に登場し、記者クラブの弊害を訴えていました。
普段からこの様な情報に触れていれば、今回の報道がいかに可笑しいかが解ると思います。

ご存知かも知れませんが、私の家は菖蒲園の以前の所有者でした。
私が幼い頃都に売却したのですが、その経緯を昨年大手Y紙が「東京の記憶」と言うコーナーで取り上げてくれました。
取材に来る前にかなり周辺を調べたらしく、
正確な事も把握していましたが、取材に来ても、こちらが話した内容は取り上げて貰えず、記者の描いた内容に沿った記事となりました。
嘘は書いていないのですが、明らかに美談に脚色されていました。
”新聞なんてそんなもの”と思って仕舞えば楽なんでしょうが・・・

陰ながら応援しますので、頑張って下さい。

投稿: hajime | 2010年1月26日 (火) 19時15分

hajimeさん、こんにちは。
前にhajimeさんのブログでコメントを書いたんですが、読んでくれたでしょうか?

僕もTBS聞いてますよ。とくにキラ☆キラは欠かさず聞いています。武田記者は、ネットでも大人気で、Twitterなどでは「TKD」と省略されてるんですよ(笑)。そういえば、武田記者の本を買ったまま読んでないなぁ。早く目を通さないと。

hajimeさんが取材を受けた件は、僕も少し耳が痛いです。あまり余計なストーリーは描かないで取材するタイプなんですが、出版社や代理店が「こうこうこういう企画で進めたい」と予め注文してくる時などは、できるだけそれに沿った文脈を作り上げて、そのアリバイのために取材することはあります。
取材の最中にもっと面白い事が聞けると、僕なんかは事前の打ち合わせを無視しちゃうこともあるんですが、その企画に何人も絡んでいると事前の企画をひっくり返すことができす、もう一度原稿を書き直させられてしまうこともあります。
取材対象者に[そんなもの]と言われるのは、やっぱり寂しいですね。僕自身も気をつけたいと思います。

投稿: 真公 | 2010年1月27日 (水) 03時31分

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