『浅草においでよ!』H20年度版より【3】
「浅草においでよ!」平成20年度版より font size>
縁ある噺家が語る、浅草の魅力 font size>
三遊亭歌る多 柳家小里ん インタビュー[その2]
昨今の落語ブームで、落語を聴きに浅草へ訪れる人が増えている。
そこで、浅草にお住まいの柳家小里ん師匠と三遊亭歌る多師匠に対談をお願いした。
落語ブームについて、そして浅草の魅力やお薦めの楽しみ方など、浅草をよく知るお二人から、興味深い話を聞くことができた。── font size>
この記事は、『浅草においでよ!平成20年度版』に掲載された記事を、一部加筆・修正して転載したものです。 font size>
■生で聴くからこそ楽しめる
■落語のライブ感
——数年前から落語ブームと言われています。女流落語家が増えている要因にも繋がると思うんですが、ブームを実感することはありますか?
歌る多 寄席のお客さんは増えていますね。ただ、同時に「この人が出るから行くんだ」って目的のお客さんも増えてます。昔の寄席って、ふらっと来てふらっと入るって感じだったと思うんです。そういう意味では、昔と今では寄席の在り方も変わってきてるんだろうなぁって感じます。
小里ん 昔っから寄席に来ていたお客さんと、ブームになって来るお客さんがいるから、まぁ違ってくるのは仕方ないな。そもそも寄席っていうのは、必ずしもいい芸を観るとか、いい噺を聴くって目的だけで行く場所じゃなかった。芝居は高いし、映画も見飽きたし、寄席に行くより仕様がないっていうくらい、娯楽の少ない時代だったんだな。だからお客さんも、落語を聴くだけじゃなくて、その日の番組全体の流れを読んで楽しむとか、演者とお客さんのやりとりを楽しむとか、お客さんも一緒になって寄席って場所を支えてくれてた。そういう場所だったんだ。
歌る多 今のブームに乗って来ていただいているお客さんが、今後も通ってくれるようなものを、私たちが提供していけば、ブームじゃなくて固定客になってもらえると思うんです。10日に一回とは言わなくても、年で3〜4回寄席に行くのが娯楽のサイクルだっていうお客さんが増えてくれれば……。浅草演芸ホールの場合は、つくばエクスプレスが開通したことで、沿線からいらっしゃるお客さんが目に見えるように増えているのも確かなんです。いま増えつつあるお客さんたちに満足して帰ってもらって、また来たいって思わせないといけないという意識は、私たちも強く持ってます。
小里ん たしかに今のブームがキッカケになって、寄席に通うお客さんが定着してくれればいいんだけどね。これまでの寄席の形態だけでやっていける時代じゃなくなっちゃった部分はあると思うよ。ホールだ何だって、落語はいくらでも聴けるからね。
歌る多 落語協会のホームページでも、無料で落語動画を公開しているんですけど、落語を聴くっていうだけなら、今はテレビやインターネットでいくらでも聴ける時代です。だけど、落語協会で動画を配信している目的は、それを観た方たちが、寄席へ来てほしいということなんです。ところが、映画とかと違って、寄席に慣れない方は、どうしても気軽に入りづらいっていう印象を持たれてしまうようですね。
小里ん それは、経験だな。子どもの時から映画を観たことないって人は、ほとんどいないけど、親が寄席にいく人じゃないと、寄席に行った経験ないってのは仕方ない。
歌る多 慣れればどうってことないんだけど、寄席に慣れないと、最初の一歩を踏み出すのに勇気が必要みたいで、どっか構えて行かなくちゃいけないって思われちゃうんでしょうかねぇ。よく噺のネタで「歌舞伎座は一番いい着物を着ていくが、寄席には普段着で入っていく」なんて使われますけど、本当に畏まるようなところじゃないんですよ。
小里ん 伝統文化っていうか、古くからある重みっていうのを感じさせちゃうんだろうな。雑誌で寄席の紹介のされるときも、けっこう小難しい扱いにされちゃったりするんだよ。「文豪が通った」なんてさ、そういうんで寄席に行くことが高尚なもんだって感じさせる記事なんかも多いからね。たしかに、インターネットだDVDだって簡単に落語を見ることができるけど、それを楽しむのと、寄席に来て噺を聴くのとは、また別の楽しみなんだよね。生っていうか“ライブ”っていうのは、家のパソコンやテレビの前で見るのとは違った楽しみ方で、そこは、昔っから変わらないんだな。
歌る多 やっぱり生で聴くと、ハプニングもあれば、少しずつ違うところもあるし、最近は、放送コードというか放送局やDVDを販売する企業に自主規制があって、テレビやDVDにはできない話もありますからね(笑)。生でしか観られないネタっていうのがたくさんあるってことです。
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