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昭和の味噌ラーメン……〈和楽〉


いま僕が仕事場兼自宅として使っている部屋は、四軒長屋の一軒だ。
僕の前の住人の方がラーメン店を営んでいたとのこと。そのラーメン店が閉店した後、そのまま居抜きで借りる人を捜していたらしいが、何年も借り手が見つからず、住宅用にキッチンや風呂を新たに付けるなどリフォームしてすぐに、僕が借りることになった。

狭い長屋の、しかも路地裏の長屋の一部屋で、どんなラーメン屋さんだったんだろうと思うのだが、実は、この長屋のすぐ近くに、とんど同じ様な建物のラーメン店がある。

稲荷町界隈のラーメン店紹介、第5弾となる「和楽」だ。

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*  *  *  *  *  *  *

お世辞にも、入りやすい店とは言えない。写真じゃ伝わらないかもしれないけど、近所でも初めて入るのにはちょっと勇気がいる(笑)。
実は、僕自身もこんなに近くにありながら入ったことがなかったが、このブログでラーメン店を紹介すると宣言した手前、うちの長屋のすぐ裏にあるこの店を避けるわけにはいかないので行ってみた。

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写真は、味噌ラーメン(680円)。
ラーメンには、豚肉や野菜の炒め合わせが載せられて、その上にちょこんと一つだけ餃子が載せられている。
味はオーソドックスな味噌味で、昭和50年代までの東京の味噌ラーメンは、ほとんどこういう味だったと懐かしく思わせてくれるラーメンだ。
他に、ニラレバなども食べたが、こちらも昔懐かしい味付け。

昔懐かしい味付けというのは、別においしくないと言っているわけではない。味としてはオーソドックスで、そうだなぁ……例えば自分で作っても、これと同じレベルの味付けは、それほど苦労しないで出せるだろうなぁ……ということで、それはそれでおいしいと言える。

もちろん、わざわざ出かけて食べる物だとは思わない。
ただ近所にいる人なら、建物の雰囲気だけで敬遠するのはちょっともったいないと思う。

というのは、この店の接客がとても気持ちがいいからだ。
僕の親父よりもかなり年上と思われるご主人が、店に入ってきたどの客にも丁寧に「いらっしゃいませ」と注文を取りにきてくれ、勘定を済ませると「いつもお越しいただいてありがとうございます」「遠くからわざわざありがとうございました」と一人ひとりに声を掛けてくれる。薄曇りのガラス越しに見える厨房の息子さんや女将さんも、物腰の柔らかい言葉使いで声を掛けてくれる。

外観だけではなく、内装も調度品も古い。少なくとも僕の年齢よりは古いものばかりだろうから、半世紀以上は経っているのではないかな。でも、決して汚いわけじゃない。ちゃんときれいに使い続けたんだろう。

こういう店は、料理は平凡な物でも客を気持ちよくさせてくれる。
そして身の丈にあった商売を続けながら、地元の人たちが集まってくる。来店している客たちは、この店の「気持ちよさ」を実感して愛している人たちばかりだ。
こうした“東京の下町らしい”店というのは、地元の人たちに愛され続けることだろう。

*  *  *  *  *  *  *

実は、この店を紹介するつもりはなかった。
わざわざ遠くから来るものではないし、地元に根付いて商売していればいい店だ。店の方だって、インターネット上で旨いだの不味いだの言われたくもないのではないかな。

ところが、ちょっと気分が変わった。

最近、下谷神社のすぐ近くに、噂の“白たいやき”のチェーン店が開店した。さっそく僕も食べたが、別にそれはそれで悪くはない。ただ、以前に紹介した上野たいやきが頑張っているすぐ近くに競合店として開店しなくても良いだろうと考えると、少し腹が立つ。この界隈は、浅草と上野の挟まれているが、とくに繁華街というわけでない。たいやきやスイーツの需要など、それほど多くはないはずだ。
別にその店も「大手資本」というほどの企業でもないだろう。詳しく調べたわけじゃないが、きっと中小企業レベルのチェーン店だと思う。もちろん個人的な怨みもない。
だが、僕は断然に「上野たいやき」を応援したい。

下の写真は「和楽」とは関係なく、「上野たいやき」の紙袋。
市販のクラフト紙の袋に、消しゴム判子で判を押している。
いいじゃん。この地元感たっぷりのセンス! 金をかけた割りに下手糞なデザインで、田舎臭い派手な色合いのメニュー看板を掲げているチェーン店より、オリジナリティがあって格好いいよ。

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メイプルも、上野たいやきも、今日紹介した和楽も、頑張っている地元の店には、どこに行っても変わらない味しか提供できないチェーン店なんかには負けないでほしい。
そう思い直して、この店も紹介することにした。

頑張れ!稲荷町!!

【名 称】和楽
【住 所】東京都台東区東上野3-2-2
【アクセス】銀座線「稲荷町駅」を出て、清洲橋通りを南
      (新御徒町方面)へ。1つ目の信号右折。す
      最初の小さい交差点を左折。数十メートル先
      左手。


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コメント

そうそう、私も白い鯛焼き屋ができたと聞いてびっくりしました。
あの地域に二店目ですものね~。(上野鯛焼きはまだ食べていません。)
白い鯛焼きは弟嫁が買って来たのを一つくれたので食べました、ま、悪くないです。

先日、メイプルの裏側をチャリで走ったのですが、我が家の方より本当に昭和が残っていますね。
また、ゆっくり散策したら面白いだろなと思いました。

投稿: mariko.mw17 | 2009年6月23日 (火) 12時18分

>marikoさん
こんにちは。
甘いものが苦手なので、鯛焼きの評価は自信ないのですが、上野たいやきも一度ぜひ食べてあげてください。

メイプルの裏側……、そこはうちの長屋のある所です。去年くらいまで、近所の子が小学生だったので、道路にはいつも蝋石で落書きがされてて、より昭和の感じを醸し出していました(笑)。

投稿: 真公 | 2009年6月23日 (火) 12時46分

はじめまして!
昨日こちらのブログを初めて拝見したばかりだったのですが、タイミング良く?丁度稲荷町に用事があったのでこちらの和楽さんにお邪魔しました。初めて訪れるお店では大概一番シンプルなラーメンを注文します。とてもオーソドックスな醤油味で食べた事が無いのに懐かしさを憶えました。稲荷町は2〜3ヶ月に一度程しか訪れませんが、このブログを参考にして色々と食べ歩いてみたいなと思います。

投稿: 銀玉 | 2009年9月 2日 (水) 12時32分

> 銀玉さんへ
はじめまして。ようこそです。
参考になるような記事は少ないと思いますが、ありがとうございます!
そういえば最近、あまりグルメ情報を載せていませんでしたので、近いうちに稲荷町のお店を紹介しますので、ぜひまたお越しくださいませ。

投稿: 真公 | 2009年9月 2日 (水) 18時16分

丁度20年前、某大手万年筆屋の裏にある小さな広告代理店に勤務していたころ、週に3日は通ったラーメン屋さんです。

当時は仲間内で「あんちゃんラーメン」と呼んでいました。元気な息子さんらしき人が印象的でした。昼時は出前も盛んで出たり入ったり。見ているだけで忙しそうだった…
今は50才を超えたくらいでは?

どんぶりに山のようにスープが盛られ、金属の丸いお盆にラーメン丼とあふれた汁がのったまま手渡されたことが昨日のように思い出されます。チャーハンも旨かったなぁ~

ここ十年ばかりはラーメン流行りで、いろいろなラーメンを食べ舌も肥えてしまっているので、今こちらで頂いても当時の印象とは違ってしまっていると思いますが、食べてみたい。

お店の名前も忘れていましたが、ヒマにあかせて調べてみて貴殿のHPにたどりつきました。
ますますのご発展を!

投稿: yaz | 2010年9月18日 (土) 07時39分

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