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何切る?……ロマンは切れない!


僕は長い間、「日刊スポーツ」を読み続けている。

25年ほど前、高校生の僕は麻雀にハマっていて、当時は雀荘から学校に通うのが当たり前だった。

もう時効だから許してもらうけど、その時分、実家がちょうど府中にあったから毎週のように馬券を買っていたし、麻雀、競馬、パチンコは当たり前だった。
今の知り合いたちに全部を話すと、きっとかなり引かれてしまうくらい、一般の人は絶対に近づかない過激なギャンブルにハマっていた時期もあって、けっして不良だったわけでもヤクザだったわけでもないけども、そういう人たちの近隣にいたことはまぁ間違いない。

作家・浅田次郎は「企業舎弟」とか「準構成員」と言われる人だったこともあり、『ラブ・レター』などの短編の中で、ヤクザでもないチンピラを描くことがあるけども、僕の学生時代もそういうチンピラみたいなもんだった。
金子正次が遺した脚本を原作にした『チ・ン・ピ・ラ』で、久保田篤(初代いいとも青年隊)演じる「太」という若者が出てくるのだが、そんな感じだった……っていっても、よく分からないかな?

浅田次郎も金子正次も、本当にチンピラの心情を描くことに長けている。チンピラやヤクザのように「裏社会」なんて言われるところは、一般社会からははみ出した人間たちの集合体なのに、その裏社会からですらはみ出してしまう主人公たち……、それは振り返ってみると、一般社会の中で生きながらどこか行き詰まったり、閉塞感の中で苦しんでいる、普通の人たちの苦悩とあまり変わりがない。

『チ・ン・ピ・ラ』を撮る前に死んでしまった金子正次の映画『竜二』は80年代の傑作の一本だと思うし、10年くらい前、入院中に『ラブ・レター』を読んだ時は、思わずウルっとしてしまう小説だった。
ともにお薦めしたいので、もし良かったらぜひどうぞ。

あぁ、いつものように脱線が長くなった……。
話を戻すと、そんな高校生の頃、雀荘にいつも置いてあったのが「日刊スポーツ」で、以来、ずっと読んでいる。

最近は購入しスペースが若干落ちたが、それでも週に3〜4回は買ってるし、たまに新聞配達のアンちゃんに頼まれると半年の定期購読するし、少なくともネットでは毎日記事を確認している。

*  *  *  *  *  *  *

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で、その日刊スポーツのサイトを見ていたら、今日、上の画像の右側の広告が目に入った。

「何切る?」と問われているのは、麻雀のある場面で、次に考える最善の策はなんだろうか?と問いかけている。

さて、麻雀のルールが分かる人なら、何を切るかな?

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約5割の人が「八萬」を選択している。
麻雀を知らない人は分からないかもしれないが、この質問は、あまりにも曖昧過ぎていて、もっと細かいシチュエーションの説明がないと、何を切っていいか判断しかねる部分がある。

で、そんな中で多くの人が「八萬」を選択にしたのは、現実的な選択をしたのだろうと読み取れる。「八萬」を選択することは、この局面から一番早く上がれる可能性が高いからだ。しかも、上がれば割といい得点を得られる。

ただ、僕は「八萬」を選択しなかった。
僕ならとりあえず、十中八九「九萬を槓」と言うところなんだけども、それができないと言う前提ならば、「七萬」を選ぶか、フリ聴になることを覚悟して「九萬」を選ぶかもしれない。こうすることで、少し遠回りになってしまうが、「役満」という最高得点を得られるかもしれないからだ。

前述した通り、あまり細かいシチュエーションが設定されていないので、現実的な選択をする気持ちも分からなくない。
たしかに、「八萬」という選択はすごく好条件。一番早く上がれる可能性があるし、上がる手もそこそこ高い。最高得点ではないけども、1ゲームで一度上がれるかどうかという高い点数だ。野球で言えば、2ランホームランくらいの価値がある。

でも、細かいシチュエーションが設定されていないなら、自分にとって絶好のシチュエーションだと仮定して考えることもできるということだ。

この場面が、「本日の半荘4回目」「全体としては2000〜3000円のプラス」「半荘の東2局」「南家」「3巡目」「持ち点プラマイ0」「場には白中発が1枚ずつ、八萬ション牌」という状況ならどうだろう?
これまた麻雀の分からない人には理解できないだろうが、要するに、無理をして高い手を狙ってもいい状況だ。

それでも一番早く上がれる可能性のある「八萬」を選択する人とは、僕は友達になれないかもしれない(笑)。

どんなシチュエーションを思い描いてもいい状況で、自分にとって都合良い条件を思い浮かべないなんて、夢がなさ過ぎるだろう。
「今君は、ホームランを打っています。どれくらいすごいホームランですか?」と聞かれて「2ランホームラン」なんて答えたくない。「9回裏2アウトから、逆転満塁場外サヨナラホームラン」って答えたい。

野球と言えば──話はまたそれるが──2年前、プロ野球の日本シリーズで、完全試合を目前にしたピッチャーを交代させた「オレ流野球」を見せられて、それまでは好意的に見ていた落合博満という野球人のことが大嫌いになった。半世紀も日本一になっていなかった中日ファンからしてみれば、能天気なロマンチストの戯言かもしれないが、僕はロマンの感じられない世の中や人生なんて、面白くも糞もないと思っている。

だから僕は、上の画像を見て「何を切るか?」と聞かれたら、やっぱりロマンを求めてしまうのだ。

*  *  *  *  *  *  *

こんな都合のいいことしか考えられない僕は、ギャンブルをやってる人なら察する通り、けっしてギャンブルに強くはない。
だって、阿佐田哲也がギャンブル小説の傑作『ドサ健ばくち地獄』で描いているような、張りつめた糸のような緊張感ただよう博打の最中は、たとえどんなに都合のいいシチュエーションでも、たぶん「八萬」を選択しなければならないからだ。

だから僕は、幸か不幸か、本職の博打打ちになることはなかった。

お陰で、いまだにロマンと現実の境をフラフラとして生きている。
ロマンなんてもとめて生きていると、「宵越しの金なんて持てるかぃ」と言い訳しながら、財布の中に500円しかないなんてことも、ちょくちょくある。まさに、映画『男はつらいよ!』ではないが、家族たちには迷惑この上ない存在だろう……。
でも、夢も持てずにつまらなそうに生きている僕を見ていたら、きっと家族もつまらないだろう。

ということで、今日もロマンを求めながら、ちゃんと仕事をするんです。


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