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天は我を見放したっ!


僕が日本映画で最も尊敬している脚本家は、橋本忍だ。
昨年、『私は貝になりたい』のリメイク版が公開されたが、1958年テレビ制作、1959年初劇場版、そして昨年のリメイク版とすべて橋本忍の脚本だ。
『羅生門』『生きる』『七人の侍』など黒澤作品の代表作の中で、黒澤明とともに共同脚本として筆をとり、『日本のいちばん長い日』(監督:岡本喜八)、『白い巨塔』(監督:山本薩夫)、『人斬り』(監督:五社秀雄)、『八つ墓村』(監督:野村芳太郎)など、名監督たちと組み日本を代表する名作を生み出してきた脚本家だ。

中でも、自らプロデューサーとして製作しながら脚本を書いた『砂の器』(監督:野村芳太郎/共同脚本:山田洋次)は、原作者の松本清張が「この映画は小説では絶対に表現できない作品」と大絶賛したほど評価されたことに、橋本忍の脚本が大きな役割を果たしている(共同脚本の山田洋次は、この作品ではアシスタント的存在)。とくに、クライマックスで描かれる回想シーンは、原作ではあっさりと描かれていた主人公の逃避行の風景が、橋本忍の脚本で見事に描かれており、素晴らしい構成となっている。
橋本忍が2006年に書いた『複眼の映像』(発行:文藝春秋)は、日本映画を好きな人には必読といっても過言ではないほど面白いが、そのことはまた改めて……。

さて、その橋本忍が『八甲田山』(監督:森谷司郎)のなかで、主人公を演じる北大路欣也に言わせた台詞が「天は我々を見放したっ!」。当時、映画の予告CMで大量に流されたために流行語にもなった。

今の僕は、まさに天に見放された気分だ。

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ところで僕は、周囲の人間が少し惹くほど、三谷幸喜の脚本作品と東京サンシャインボーイズの面々の関わる作品が好きだ。
出身が映画と舞台という違いはあるが、橋本忍の脚本の作風とはまったく違い、喜劇作品を追求している三谷幸喜。名作と評価するのは橋本忍作品でも、好きなのは断然に三谷幸喜作品だ。

三谷幸喜の脚本に関していえば、東京サンシャインボーイズ時代である91年頃から現在まで、舞台も映画もテレビドラマもほとんど観ている。もちろん、ソフト化されている映像は9割くらい買っている。

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上の写真は、どれもDVD化されていない映像作品のオリジナルコレクション。
 ・[後列左]舞台『東京サンシャインボーイズの罠』(94年)
 ・[後列中]ドラマ『総務課長戦場へ行く』(94年)
 ・[後列右]ドラマ『合い言葉は勇気』(00年)
 ・[前列左]ドラマ『総理と呼ばないで』(97年)
 ・[前列中]舞台『笑の大学』(96年)
 ・[前列右]舞台『ショー・マスト・ゴー・オン』(94年)

以前も少し書いたが、この数年、舞台や落語や映画のVHSテープからDVDへのダビングをせっせせっせとしている。
で、お気に入りの作品は、こうやってオリジナルのジャケットなんかを作ってコレクションにしているわけだが、三谷幸喜に作品に関しては、かなり真面目にというか、仕事と同じくらいのクオリティで作っていてる。

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例えば、上の『笑の大学』。
左がオリジナルジャケット。右が市販されているジャケット。
市販のDVDは、98年にパルコ劇場で再演された舞台を当時NHKで放送した映像。
オリジナル版は、96年の初演舞台で、当時フジテレビで放送した番組を録画してDVD化したもの。

初演舞台の劇場プログラムの画像を使って、公演データのテキストや、あらすじ、解説(あらすじと解説は、オリジナル原稿)まで付けるという念の入れ様。“オリジナル特典”として、ラジオドラマ版(出演:坂東八十助、三宅裕司)音源付き。
下の画像は、中ジャケ。左がオリジナルで、右が市販版。

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他にも、『ショー・マスト・ゴー・オン』では、当時のパンフレットを単純にスキャニングするだけじゃなく、イラストをほとんど完全に描き直して、当時のロゴをトレースし直して、オリジナルジャケットを作ってる。
ジャケット作るのに、休みを丸一日潰すことも珍しくない。
前掲の写真には載せてないが、ドラマ『竜馬におまかせ!』や『今夜宇宙の片隅で』など、未DVD化作品で手元にある映像は、すでにすべてオリジナル版を作ってある。

もちろん、できるだけ舞台に足を運んでいるし、正規の市販版もほとんど持ってる。オリジナル版は当然ながら不当販売なんてすることはせずに、あくまでも個人のコレクション。譲ってくれと言われても、これだけは絶対に譲らない。

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ということで、これくらい三谷幸喜関連作品が好きだ。三谷幸喜だけじゃなく、他のメンバーの作品も好きで、実際今月は、梶原善の出演舞台に足を運ぶ予定。

で、その三谷幸喜と東京サンシャインボーイズの面々が、新宿・シアタートップスの閉館イベント『さよならシアタートップス 最後の文化祭』で、15年ぶりに結集し公演している。

ところが、チケットがまったく入手できない。
まぁ、小さい小屋で短期間の公演なので、最初からチケットが取れるとは思ってなかったけど……。
それでも、やっぱり公演が始まると……。はぁ……。

1994年、東京サンシャインボーイズは、30年後の2024年まで“充電期間”として休止した。それから15年間待ち続けていた身としては、公演に行けた人が喜んだ姿を読むのも空しくなりそうで、SNSや掲示板すら観ていない。

まさに『天は我を見放したっ!』という心境で過ごす今日この頃なのだ。


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