« お供え物泥棒とお天道様 | トップページ | 「よしちょうけいあんちずかや」とは……
(落語『甲府い』と『百川』) »

木綿もいいけど、散歩のおやつも……豆腐専門店〈栃木家〉

昨年のことだが、落語家の三笑亭夢太郎さんと、「江戸売り声師」の富田章司さんにインタビューをしている時、話題に出たのが『甲府い』という落語の噺。

甲府から立身出世のために江戸に出てきた青年・善吉が、浅草寺の境内でスリに遭って一文無しとなり、空腹に耐えられなくなって、豆腐屋でオカラを盗み見つかってしまう。それが縁で善吉は豆腐屋で働くことになり、一所懸命に働く。やがて「豆腐〜ぃ、な〜ま揚〜げ、がんもどきぃ〜」という売り声が評判となって、成功していく……という人情噺だ(詳しくは、この記事のコメント欄を参照)。

夢太郎さんの師匠筋であり昭和の名人の一人、八代目・三笑亭可楽の得意にした噺とされているが、目の前で夢太郎さんが短めに聞かせてくれ、その上なんと、富田章司さんが売り声を披露してくれるという贅沢な“一席”だった。

以来、とても好きな演目となったが、iTunesからこの噺が流れると、ついつい豆腐が食べたくなる。
そんなときに行くのが、伝法院通りの東端にある、甲府家ならぬ「栃木家」という豆腐専門店だ。

*  *  *  *  *  *  *
Cb08071401

明治20年に、栃木出身の初代ご主人が創業したという。やはり『甲府い』の善吉青年を思い浮かべてしまう。

国産大豆を石臼で挽き、塩田にがりを加えてできた手づくり豆腐は、豆腐らしいしっかりとした“コク”がある。
最近は、「なめらかブーム」という気持ち悪い流行もあり、こちらでも「おぼろ豆腐」が人気商品らしいが、ここはぜひ、普通の「もめん豆腐」で豆腐らしい食感を楽しんでほしい。
角もない豆腐なんざぁ、江戸っ子の食いもんじゃねぇやい! とは言いつつも、「おぼろ豆腐」をしっかりとザルで水切りし、ざる豆腐にして一杯飲むのが楽しい気持ちも分かるので、まぁそれはそれで……。

「豆腐、生揚げ、がんもどき」という通り、豆腐屋といえば生揚げやがんもどきも外せない。ここのがんもどきが、また旨い! オススメは「野菜がんもどき」と「肉入りがんもどき」。
昨日、出掛けた帰りに栃木屋さんによって、もめん豆腐、野菜がんもどき、肉入りがんもどきを買ってきて夕飯にしたが、そういえば昨日は、その3品の他に昼間食べたアイスだけだったなぁ……。
あ、オカラも旨いので、これもオススメ(お店では一応「卯の花」として売ってるが、それほど上等なものではないので、ここでは「おから」って呼んでおく)。

Cb08071402

ちょっと足を伸ばして浅草に遊びにきた人には、写真の「ドーナツ」はどうだろうか? 豆乳とオカラを使って作られているので、甘みはとても抑えられているが、その分、生地の旨味がしっかりと伝わって旨い。女の子からも好評を得ているので、お菓子が好きな人にはオススメできそうだ。散歩の土産なら「さしみゆば」を買って、家に帰って日本酒で一杯というのもいいだろう。僕はまだ食べたことがないが、「豆乳アイス」や「杏仁豆腐」も売っているので、暑い時期には散歩ついでに立ち寄って、涼をとるのもいいんじゃないだろうか……。

*  *  *  *  *  *  *

浅草だけじゃなく、台東区にはまだまだ豆腐屋が多く、うちの長屋からすぐ近くにも2軒ほど豆腐屋がある。よく言われることだが、スーパーの豆腐やがんもどきでは、言葉の通り“味気ない”ので、専門店の豆腐屋さんはいつまでも残ってほしい。

ところで、昨日、栃木家の目の前にスクーターを留めて買い物をし、帰ろうと思ったらスクーターが急に動かなくなってしまった。原因は不明。エンジン系統のトラブルではなく、なぜかタイヤがロックしてしまったようなので、何らかの物を巻き込んでしまったのか? でも、それらしきもは見当たらず……。

今の時期こそ、スクーターを重宝しているのに、まったく誰に似たのか、いけずなスクーターだ。豆腐の角でもぶつけてやれば、機嫌を直してくれるだろうか……と、買ったばかりの豆腐をぶつけてやりたくなったが、さすがにもったいないので、近くの知り合いのビルに置かしてもらってきた。


【店名】栃木家商店
【住所】東京都台東区浅草2-2-1
【電 話】03-3841-5731
【営業時間】平日・土曜=9:00〜19:00/
      日・祝=10:00〜18:00/不定休
【アクセス】雷門から仲見世通りを浅草寺方面へ。伝法
      院通りまできたら、右折(東方面)して、
      20〜30メートルほどの左側。

*  *  *  *  *  *  *
【落語噺「甲府い」】
この記事のコメント欄に、簡単な粗筋を書いておきました。
*  *  *  *  *  *  *
【「千字寄席」】
さらに詳しく知りたい人は、落語のあらすじサイト「千字寄席」さん(←クリック)へどうぞ。


↓食べログでは、ココで掲載した以外の店も紹介しています。
食べログ グルメブログランキング にほんブログ村 地域生活(都道府県)ブログ 東京情報へにほんブログ村 地域生活(街) 東京ブログ 上野・御徒町・浅草情報へ

|

« お供え物泥棒とお天道様 | トップページ | 「よしちょうけいあんちずかや」とは……
(落語『甲府い』と『百川』) »

d.下町風情」カテゴリの記事

f.雑食私感」カテゴリの記事

コメント


簡単な解説です。

-----------------------------------------------------------

【落語噺「甲府い」】
甲府育ちの善吉は、早くから両親をなくし伯父夫婦に育てられる。二十歳になったのを期に江戸に出て出世をし育ての親に恩を返すと、身延山に願をかけて江戸に上った。ところが、江戸についた早々、浅草寺の境内で巾着をすられて無一文になる。しばらく我慢したが、あまりにも腹が減って、豆腐屋でオカラを盗み食いしたところ、見つかってしまう。しかし、それが縁でその豆腐屋で奉公することになった。豆腐屋の仕事には給金が出ないが、それを売り歩けば歩合がもらえることになり、その日から毎日、「豆腐ぃ、胡麻入り、がんもどき」と売って歩いた。この売り声が評判となり、だんだんと客もついて売り上げも立派になってきた。すると豆腐屋の主人から、娘のお孝の婿に来ないかと縁談を持ちかけられ、目出たく豆腐屋の養子におさまった。それからは、さらに夫婦で家業に励んで店も繁盛し、地主になるなど成功をし、善吉は立派な跡継ぎとなった。ある日、江戸に来てから甲府に帰省していなかった善吉は、夫婦で里帰りし見延山へお礼参りをすることとなった。出発しようとしたところ、近所の人から「おや? どこかへお出かけですか?」と訪ねられ、善吉が振り向いて「甲府〜ぃ」と言うと、お孝がすかさず言った言葉が「お参り、願ほどき〜」。

*  *  *  *  *  *  *

典型的な人情話で、多くの江戸落語の名人たちが手がけているが、とくに八代目・三笑亭可楽が好んで高座にかけたと言われている。『甲府い』では、「胡麻入り豆腐」を売っているために「豆腐、胡麻入り、がんもどき」という売り声になっているが、文中では、富田さんの売り声通り「豆腐、生揚げ、がんもどき」とした。

投稿: 真公 | 2008年7月15日 (火) 05時28分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1003631/22282383

この記事へのトラックバック一覧です: 木綿もいいけど、散歩のおやつも……豆腐専門店〈栃木家〉:

« お供え物泥棒とお天道様 | トップページ | 「よしちょうけいあんちずかや」とは……
(落語『甲府い』と『百川』) »