オリコンよ、出版人としての恥を知れ!
この数カ月、公私とも「超」が3つくらい付くほど多忙となり、あまり更新できずに放置しているこのブログだが、緊急事態が発生したので、少しでも多くの方の知っていただこうとお知らせしたいと思う。
以前、このブログでも紹介した「Jポップとは何か」の著者、烏賀陽(うがや)弘道さんが、音楽リサーチの「オリコン」から不当に訴えられた。
以下、烏賀陽さんからのメールをそのまま転載する。裁判所に訴えられてすぐの連絡なので、やや気分が高まって長文になっているが、ぜひ読んでほしい。
(以下転載)
みなさん 同じ文面を一斉にお送りする失礼をお許しください。
緊急事態が起きました。どうか、みなさんのお知恵、お力を貸してください。記事にしてください。ブログに書いてください。ウエブサイトに載せてください。メールを転送してください。言いふらしてください。
05年12月13日、月刊誌「サイゾー」編集部に損害賠償訴訟の訴状が送られてきました。原告は、音楽ヒットチャートでは知らない人のない巨大独占企業「オリコン」。その企業が、烏賀陽弘道という一個人に対して、5000万円という巨額の損害賠償金を支払うよう求める民事訴訟を東京地裁に起こしたのです。
訴訟の対象になったのは、「サイゾー」06年4月号51ページの「ジャニーズは超VIP待遇!?事務所とオリコンの蜜月関係」という1ページの記事に掲載された烏賀陽のわずか20行ほどのコメントです。
これは、サイゾー編集部からの電話取材に対して、烏賀陽が話した内容を同編集部がまとめて文字化したものです(よって、内容は烏賀陽の原義とはかなり隔たっていますが、そのへんはひとまず置きます)。よって、烏賀陽が能動的に寄稿したものでも、執筆したものでもありません。
その中で、烏賀陽はオリコンのヒットチャートのあり方についていくつかの疑問を提示しています。ここにコメントしたことは、烏賀陽の取材経験でも、音楽業界内の複数のソースから何度も出た話で、特に目新しい話や驚くような話はひとつもありません。(ご参考までに記事をJPEG形式で添付します。1MB近くありますが、すみません。PDFファイルにする方法をしらんのです)
この訴訟には、いくつか露骨なまでの特徴があります。
(1)記事を掲載した「サイゾー」および発行元「インフォバーン」を訴訟対象にしていないこと。つまり烏賀陽個人だけを狙い撃ちしている。烏賀陽は前述の弁護士費用、訴訟準備などをすべて一人で負担しなければならないことになります。これではフリー記者としての活動を停止し、訴訟対策に専念しなくてはなりません。みなさん、ワタクシは生活費は一体どうやって稼げばよいのでしょう(笑)。
(2)この5000万円という金額は、応訴するために弁護士を雇うだけでも着手金が219万円かかるというおそるべき額です(そんな貯金あるわけないですがな=笑)。裁判で負ければ、烏賀陽はジャーナリストとしての信用を失い、職業的生命を抹殺されてしまうばかりか、賠償金を払えず、社会的生命をも抹殺されかねない恐れがあります。
どこかで聞いた覚えはありませんか? そう。これは、ジャーナリストの批判を封じるための恫喝を目的とした、消費者金融・武富士がかつて行ったのと同じ手法の、恫喝訴訟と言えるでしょう(武富士訴訟ではジャーナリスト側が勝訴し、逆に武富士を訴えて勝っています)。
http://www.kinyobi.co.jp/takefuji
(3)しかも、訴状をどうひっくり返して読んでも、なぜ5000万円の損害を受けたのかという計算の合理的根拠はまったくどこにも書いてありません。ずさん、というより、相手が払えない(そしてビビる)高額であればそれでいいという額をテキトーに選んだ印象を受けます。
(4)烏賀陽は一貫して「レコード会社の宣伝・営業担当者にはオリコンの数字を操作しようとする良からぬ輩もいる=オリコンは被害者である」という立場を取っているし、文意からもそれは明らかなのに、なぜかオリコンはそれを無視し(あるいは理解できず)烏賀陽の記事が自社の信用を損なったと主張していること。
(5)裁判の証拠書類として、烏賀陽が「アエラ」03年2月3日号に書いたオリコンの記事が添付されていました。
http://ugaya.com/private/music_jpopcolumn18.html
これはオリコンのデータとPOSデータ(サウンドスキャン社)のデータが乖離しているのはなぜか?という疑問を提示したものです。この記事も当時オリコンの小池恒右社長の憤激を買いました(社長直々にお怒りの電話を頂戴しました)ので、烏賀陽がオリコンの「好ましからざる人物」にリストアップされていたことは間違いありません(取材拒否も数回あり)。
(6)オリコンは「オリジナル・コンフィデンス」はじめ多数の出版物を出す出版社でもあります。ですから、もし「ウガヤのいうことはウソだ」というのなら、そこの紙面上で思う存分「ウガヤの言っていることはウソです、なぜなら××」と意見を述べればいい。ぼくもまたどこかの媒体で反論します。これこそが正統な「言論」でありませんか。それこそが正当な出版社のすべきことではありませんか。意見が違うものは高額の恫喝訴訟で黙らせる、というのは民事司法を使った暴力に近い。
みなさん。ぼくはずぼらなので「運動」とか「闘争」とか「たたかい」とかとは縁遠い人間ですが、この訴訟はいくらなんでもひどすぎる。あまりに露骨な言論妨害だ。言論・表現の自由という基本的人権、フリーランス記者を小馬鹿にしている。
もしこの種の恫喝訴訟がまかり通るようになれば、フリー記者には(いや、あるいは社員記者もできなくなるかも)企業批判はまったくできなくなります。雑誌の求めに応じてコメントひとつしても、5000万円なのですよ。コメントすらできないではありませんか。
そんな時代が来てほしいですか?ぼくはいやです。
これが言論の自由へのテロでなくて何でしょう。民主主義の破壊でなくて何でしょう。これは体を張ってでも阻止せねばなりません。
というわけで、みなさん。長々とすみません。お忙しいところ本当に恐縮ですが、どうかお知恵とお力を貸してください。ご希望の方には訴状そのほか資料をお届けします。
どうか無視しないでください。助けてください。ぼくも2,3日前まではこんな話は(けしからんことに)他人事だと思っていたのです。でも、こんな恐ろしいことが、いつ、どこでみなさんの上に厄災として降りかかるかわからない時代になってきたようです。
長文失礼しました。ご静聴に感謝します。
烏賀陽
* * * * * * *
烏賀陽さんの文章にも書かれているが、自らメディアを発行する出版社であるオリコンが、同じ出版人と互いの権利を認め合いながら議論するのではなく、裁判という手段に出て何を訴えようというのか?
ましてや自分以上もしくは同等に権力を持つものではなく、一フリーランス・ジャーナリストを狙い撃ちするなど、決して許されることではない。そもそもこの手の民事裁判などというものは、立場の弱い者が、より立場の強い者に対して、「他に解決する手段がない」という時に用いられるべき手段であり、音楽業界をある意味で牛耳るオリコンと、組織の属さない一音楽ジャーナリストの関係では、まったくこれに当てはまらない。
(まぁこの辺が、しょせんは電通とべったりのオリコンの本質的な体質というもので、出版人というよりも世論調査機関であり世論誘導機関としての有り体だったりするのだが……)
やはり烏賀陽さんが紹介している「武富士訴訟」は、三宅勝久さんというフリーランス・ジャーナリストが、武富士の消費者金融としての不当な貸付や取り立てについて、極めて丁寧に取材を重ねて批判した記事に対して、武富士が個人(と週刊金曜日)を訴え、三宅さんも反訴して、昨年、勝利が確定した裁判だ。裁判所も、「極めて不当な訴え」と武富士の姿勢を批判している。
消費者金融対する、現在の社会的な厳しい風潮や、不当な金利を制限する法律改正などの一連の流れに一役かった裁判だった。
僕は、こうした大企業による不当な裁判を、絶対に許すわけにはいかないと考えている。
これは、「言論・表現・報道の自由」に対する冒涜であり、民主主義に対する挑発行為だ。
これを読んでくれた方は、ぜひ、こうしたオリコンや大企業の悪事を忘れないでください。
そして、どこかで烏賀陽さんの今後を見る機会があったら、応援してあげてください。
よろしくお願いします。
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