稲荷町だけにいなり寿司……〈きつ音 忠信〉
以前、「義経千本桜」の“四ノ切”を紹介したたが、その話から店名を命名したといういなり寿司専門店、その名も「きつ音 忠信」。

台東区は下町らしく和菓子屋がそこら中にあるので、いなり寿司もそこら中で売っていることになるが、さすがに「いなり寿司専門店」はそれほど多くない。以前は多くあったようだが、今では数えるほどになってしまった。
店内にはいると、小さなカウンター席と、2人掛けのテーブル席が2卓。小さな寿司屋という佇まいだが、いなり寿司、かんぴょう巻、しそ巻の3つしか取り扱っていないことが、壁に貼られたメニュー表からうかがえる。
オヤジさんとおかみさんの二人が対応してくれる。一見すると取っつきにくそうだが、余計なおしゃべりはしないという職人タイプというだけで、応対は申し分ない。いなり寿司ものり巻きも、注文してから拵えてくれる。「こしらえる」なんて、今どき『渡る世間は鬼ばかり』の中でしか使わない言葉だと思っていたが、このお店ではまさに「拵える」という言葉がぴったりだ。
店内で食べることもできるが、僕の場合はいつも持ち帰る。店内で食べている人は見たことないが、たまた僕が行くときにお客さんがいないだけで、ちゃんと店内で食べる人もいるようだ。
裏返している皮は濃いめの味だが、しつこいということはない。中身にご飯のほか、酢漬けしたハスと黒ゴマが入っていて、酢味のハスが絶妙だ。煮汁がしっかりと切ってあるのも、後味の良さに役立っている。
いなり寿司=きつね=千本桜というだけで、べつに由来があるわけではない。
しかし、歌舞伎好きなら、「直侍※」の舞台となる入谷の雰囲気を味わいながら、散歩がてらに立ち寄ってみて、江戸庶民の味を楽しむのも乙ってもんだ。
【名 称】きつ音 忠信
【住 所】東京都台東区東上野4-23-6
【TEL】03-3843-9985
【営業時間】平日9:00〜20:00/
日・祝9:00〜18:00/定休=月曜
【お薦め】いなり寿司4個とのり巻1本(660円)〜
※折り詰めは50円増し
【アクセス】稲荷町交差点から、清洲橋通りを入谷方面へ。
300mほど歩いて歩道橋を過ぎてから2つ目の
信号を左折。すぐ先の交差点をさらに左折。す
ぐ右手。
【MAP】「長屋界隈」の地図は→こちらをクリック←
地図上の「13」番がこのお店
【食べログ】きつ音 忠信
★★★☆☆ 3.0
【追記】
通称「直侍」の別外題は「雪暮夜入谷畦道」(ゆきのゆうべいりやのあぜみち)という。さらに、「河内山」と呼ばれる前半部と、後半の「直侍」を合わせて「天衣紛上野初花」(くもにまごううえののはつはな)という狂言となっている。台詞廻しが軽快な河竹黙阿弥の作品。
「入谷」「上野」と書かれているとおり、この長屋からすぐ近くが舞台。ちなみに僕の住む長屋は、江戸時代風に言うならば「下谷界隈」だ。「直侍」に登場する「丑松」のねぐらがまさに下谷。
で、実際に「直侍」が入谷で立ち寄るのは、いなり寿司じゃなくてそば屋である。
↓食べログでは、ココで掲載した以外の店も紹介しています。
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