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熱しやすく冷めやすい(WBCを観て1)

WBCで日本代表が優勝して、国内ではオリンピックで金メダルを獲得した荒川静香のことをすっかり忘れたかのような大騒ぎ。
先日見たPARCO歌舞伎「決闘!高田馬場」でも、時事ネタとして染五郎が「イナバウアー」のギャグを披露していたが、すでに「WBCネタ」に変更されたらしい。

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子どもの頃から体を動かすのが好きだが、それ以上に観戦するのが好きだった僕としては、仕事が忙しくてもこういう大きなスポーツイベントは欠かさず見てしまう。22日の決勝戦は、近くのスポーツバーでお昼ついでに、風船を飛ばしながら観戦した。

今年は3年振りに巨人ファンに戻ることになったので、今日から開幕するプロ野球も、個人的には一層楽しみになったと、今回のWBCの結果には大いに喜んでいる。

最初の大会として問題点は沢山はらんでいる。審判問題など、アメリカの勝手気ままな運営方法なども問題だが、何よりも問題なのは、出場した選手に対するケアについて何も方針がないままに開催されたことだ。
実際、岩村選手や“神の右手”川崎選手など、日本代表に選ばれたことで怪我した選手は、本来の仕事の場であるシーズンの開幕には間に合わない。また、代表には選ばれたが残念ながら出場機会に恵まれなかった選手は、本来ならばオープン戦で試合感を養えたのに、実戦での試合感のないままにシーズンに入る。こうした選手が、今年のペナントレースで著しく成績を落とした場合、球界はどういう保障をすべきなのか、または実際に保障をするのか、まったくと言っていいほど議論されていない。

今後、これらの問題を解決していけば、きっと大きなイベントとして位置づけられ、日本の中で野球の底辺も広がり、結果として国内の野球人気も高まるはずだ。

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さて、それはそれとして、今年は世界的にもっと大きなスポーツイベントが待っている。サッカーのW杯だ。

今のサッカー日本代表は、これまでの日本代表とは比較にならないほど強い。間違いなく強くなった。世界のサッカー先進国の中の(かなり下ではあるが)端っこに加わったと言っても言い過ぎではないかもしれない。

でも、きっと予選敗退で終わる。もちろんベスト16に加わる可能性もあるが、かなり低い確率だと言っていい。
前回の韓国の活躍のようにベスト4なんて、間違いなく望めない。
日本代表の実力が上がったといっても、まだまだそんなもんだ。
世界的には30位くらいの位置付けでしかない(FIFAランキングでは16位になっているが、FIFAランキングほど当てにならないスポーツ・ランキングは無いと言われるほど曖昧なランキングだ)。

問題は、そんな現実を見せられたとき、それでも日本人が世界最高峰のサッカーを観戦し、楽しむことができるかどうかだ。

荒川静香の金メダル、WBCの優勝と、「世界一」になることがどれほど日本を盛り上げるか、よく分かるこの数か月。同時に「世界一」に慣れてしまった数か月でもある。

そろそろ、結果だけで一喜一憂せず、スポーツを文化として育てる力を、日本全体が持ち合わせる時期に来ていると思う。

(「WBCを観て2」につづく)


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