メーデーと労働組合と春の空
昨日、5月1日はメーデーだった。
数年ぶりにメーデーに参加して、フリーランスとはいえ、自分が労働者として社会に存在していることを意識した。
大企業による信じられないような事件・事故が起きている。
卵や牛肉など食品偽装事件、大病院の医療ミス隠蔽事件、自動車会社のリコール隠蔽事件、航空旅客機の相次ぐミス、そして先日のJR西日本・福地山線脱線事故。
これらはすべて人の命に関わるような事故・事件だが、この他にも人命に直接関わるというほどではないにしろ、例えば銀行の顧客情報流出問題など、大企業によってもたらされた事故・事件が連日マスコミに登場している。そのマスコミでさえ、自民党の圧力によるNHK番組改編問題や、朝日新聞社の武富士による巨額資金提供など、様々な問題を抱えていることが噴出している。
この中には、以前から付き合いがあって本社の事情などをよく知っている企業や、事件を起こした企業のその後の取り組みについて取材して記事を書いたこともあるが、僕からみて事件後も心から反省しているとは思えない企業もあり、これからも注目していかなければいけないと思っている。
こうした事故や事件を起こすのは、その大企業で働いていた労働者・従業員たちである。彼らの起こした責任は追及しなければならないが、それ以上にその背景には、企業の経営陣による誤った企業運営があるはずだ。それと同時に、大企業の多くには労働組合が存在している。
こうした事件を起こした企業の労組は、いったい何をしていたんだろうか?
すでに、人権無視とも思える「日勤教育」なる再教育プログラムが、JR西日本の従業員たちに過度のプレッシャーを与え、それが今回の事故の遠因になっているのではないかという指摘が、マスコミの中でも話題になっている。
そうした過度の「従業員教育」は、労働組合が「労働者の人権を守り、労働者の地位・向上を図る」といった労組の基本的立場を発揮していれば、もっと早い段階で是正されていた可能性がある(もっとも、「日勤教育」そのものが、労組の分裂の歴史と大きく関わっているという背景もある)。
また、過密ダイヤについても、「安全な職場づくり」「安全なサービス提供」という80年代以降の連合系労組がしきりと重点課題として取りあげていた目標を、きちんと実践していれば、労組がJRに過密ダイヤの是正を要求してしかるべきではなかったのだろうか?
いずれにしても、今回の脱線事故だけでも、そこで働く従業員・労働者の代表として機能すべき労組が、健全に機能していなかったと思われる問題点が存在している。
その原点が「労資協調路線」以降の労組の弱体化だ。これは、某大手食品メーカーの牛肉偽装事件や、某航空会社の相次ぐ整備トラブルなどでも言えることである。
僕たちは働いている以上、労働者だ。
その労働者は、一人ひとりでは実現できないことが多い。だからこそ労組がある。その労組は、自分たちの権利を主張するだけの存在ではなく、結果として消費者や顧客の安全を守るために機能しなくてはいけない。
少なくとも、これからの労働組合は、企業の言いなりになるのではなく、「自分たちも消費者と同じ立場である」という観点から、自分が働く企業をチェックする必要がある。
僕自身、普段関わっている仕事について、もっと意識を高く持つ必要があるのかも知れない。
毎年のお祭り行事のようになったメーデーだが、年々、その注目度は低くなっている。
ニートのように、労組どころか企業にすら属さない社会人も増えている。
そうした見えない要求や聞こえない声は、どこへ発散されているのだろうか?
そういえば、久しぶりのメーデー参加だったが、昔から5月1日はなぜか天気がいいような気がする。
メーデー終了後、知人たちと恵比寿で合流し、昼間の2時過ぎから夜遅くまで酒を飲んだ。
久しぶりに酔っぱらったが、最近は酔うとなぜか気分が滅入るようになった。憂鬱な気分のまま、とぼとぼと上野の街を歩いていた。上野の夜空はあまり美しいものではなく、より憂鬱にさせられる。
今日も晴れている。
天気のいい春の空は、見ているだけで気分がいい。
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