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いつまでも愛されるファンタジー
(映画「ネバーランド」を観て)

実際に観たのは2か月近く前なのだが、お薦めしたいので書いておく。
公開された映画がDVDやビデオになるのに時間がかからなくなった現在では、二番館、三番館という言葉も死語になりつつあるが、そのかわりにDVDやビデオになる前に「名画座」と呼ばれる映画館で上映されることもある。
お近くの名画座スケジュールをチェックして上演予定があれば、ぜひ映画館で観てもらいたい一本が、「ピーターパン」の原作者・バリを描いた『ネバーランド』である。

*  *  *  *  *  *  *

「ピーター・パン」が好きな人は、最初から最後まで楽しませてもらえること間違いなしだ。

ファーストカットで、20世紀初頭のイギリスの劇場が移されると、そこにいるのはその劇場で行われる芝居の興行主であるフローマン。演じているのは、映画『フック』('91)でフック船長を演じたダスティン・ホフマンである。
この時から僕はもう、この映画の魅力に引き込まれていった。
ちなみに、このフローマンは、バリのことをもっとも理解している大人という役柄だ。ピーター・パンの敵役でありながら彼をもっとも愛する大人がフック船長であることを考えると、絶妙のキャスティングなのだ。

そして、この映画の主人公で「ピーター・パン」の生みの親ジェームズ・M・バリが登場する。バリに扮するジョニー・デップは、その端正な顔つきと苦労したというスコットランド訛りを身に付け、まさに英国紳士のようだ。写真で見るバリとも似ている。これまたぴったりのキャスティング。

10分が過ぎる頃には、“ピーター・パン”とそっくりな少年ピーター(フレディ・ハイモア)、かわいい弟“マイケル”やその兄弟たちが出てくる。イギリス生まれケイト・ウィンスレット演じるシルヴィアは、まるで“ウェンディ”が大人になったような母親だ。そうした「ピーター・パン」を連想させるキャラクターは、たくさん登場する。シルヴィアの母親クリスティは、ウェンディを無理矢理レディにしようとする“ミリセント伯母さん”、子どもたちの大好きなバリの飼い犬は、ウェンディの乳母犬“ナナ”だ。
登場人物だけでなく、ストーリーが展開するとともに出てくるエピソードや台詞の中にも、「ピーター・パン」の要素がぎっしり詰め込まれている。ピーター・パンが両親の話を聞いて家出するケンジントン公園、凧揚げするシーンでは「信じれば飛べる!」……etc.。そして、ピーター・パンのモデルになったピーターが、ピーター・パンとは逆に「早く大人になりたい」と何度も言うのは、この映画の重要なキーワードとなる。
ピーター・パンについてまったく知らないという人は少ないだろう。映画を見進める中で、誰もが、「あ、この場面はあの部分に繋がる」と連想させられるのだ。

こうしたキャスティングや脚本の巧みさとともに、もう一つ、カメラワークや構図が絶妙であったことも、この映画の質を高めている。撮影監督のロベルト・シェイファーは、本作品の監督マーク・フォースターと『チョコレート』('02)でも組んでいるが、たしかに『チョコレート』も絶妙な構図を作っていた。他の作品を観ていないので断言はできないが、シェイファーの活躍が見逃せないことも書き残しておきたい。

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実際にバリがこれほど純粋な人物であったかはわからない。そもそも、この作品がどれほど事実に基づいているかもわからない。しかし、そんなことはどうでもいい。

「ピーター・パン」は、子どもの持つイマジネーション=想像力が、どれほど重要であるかを教えてくれる作品だ。子どもであろうが大人であろうが、そんな豊かな想像力をいつまでも大切にしたいと思わせてくれる。だからこそ、世界中で愛される極上のファンタジーなのだ。

その「ピーター・パン」が誕生してからおよそ100年、この映画『ネバー・ランド』は、21世紀の上質のファンタジーである。

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【作品名】ネバーランド
    (Finding Neverland/'04/
     イギリス・アメリカ/100分)
【監督】マーク・フォースター
【脚本】デイヴィッド・マギー
【撮影】ロベルト・シェイファー
【出演】ジョニー・デップ(『ブロウ』'01)
    ケイト・ウィンスレット
    (『エターナル・サンシャイン』'04)
    ダスティン・ホフマン(『フック』'91/
    『ニューオーリンズ・トライアル』'03)
    フレディ・ハイモア
    ニック・ラウド
    ジュリー・クリスティ
    (『天国から来たチャンピオン』'78)
    ラダ・ミッチェル
【個人的評価】★★★★★★★☆☆☆(10点満点)
【オススメ度】★★★☆☆     (5点満点)

※人名横のカッコ内は、その人の関連作品の中でできるだけ最近のオススメ作品。

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